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幼馴染領主を、処刑される運命から救いたくて  作者: myano
第一章 滅亡の運命を回避したくて

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第31話 砦防衛戦 2日目

 翌朝。

 今日は日の出とともにルーザス軍が砦に攻撃を仕掛けた。

 東門では、ルーザス軍の兵士たちが梯子を掛けて壁を登ろうとしている。


(……サウザン隊には破城槌が配備されていないのか? いや、決めつけるのは良くないな)


 サディスは首を振ると、兵の指揮に集中した。



 今日のサウザン隊は、門を避けるように梯子を掛けてくる。


(守備兵を門の上から移動させ、隙を見て破城槌を出すつもりか?)


 サディスは敵の狙いを予想しつつ、様々な状況に対応できるように手を打つ。


「サディス様! 北門に破城槌が現れたようで、門の真上に兵を回したいそうです」

「分かった! 破壊するまではオレたちがフォローすると伝えてくれ!」


 伝令に対してそう返事すると、サディスは部隊の守備範囲を北に広げるべく、兵の一部を北に回した。



 しばらくすると、東門の守備隊は苦戦が目立ち始める。

 サウザン隊は守備兵の薄いところを突くような動きを見せ、守備兵たちはその動きに翻弄されていた。

 また、守備範囲が北に延びたことで、手薄になるエリアが生まれている。


(仕方ない。門の真上の兵士を他に回そう)


 サディスはそう決断すると、破城槌に備えて残していた兵士を他に振り分けた。


 だが、敵も一筋縄ではいかない。

 サディスが東門の上の兵を移動させたのを見逃がさず、サウザン隊も兵士たちを動かした。

 今度は門のすぐそばに梯子を設置し、守備の薄くなった場所を狙う。


「やっぱりそう来るよな……」


 サディスはチラリと北側を見る。

 北門が突破された様子はないが、兵士が慌ただしく動き回っているので、北に回した兵を戻す余裕も無さそうだ。


 サディスは伝令を呼び、北門のフォローに回っている兵士たちに向けた指示を伝える。


「北門の部隊が破城槌を破壊したら、すぐ持ち場に戻るよう伝えてくれ」

「承知しました!」


 伝令が北に向かって走っていく。

 サディスは自らの頬を軽く叩くと、近くに置いてあった弓と矢を手に取った。


「仕方ない。兵士たちが戻るまでの間、オレも前に出るか」


 彼はそう言いながら東門の真上に立ち、弓を構える。


「サディス様!? 弓術の心得もあるのですか!?」


 近くにいた兵士が驚いて声を上げる。


「きみたちには及ばないよ。だけど、今なら当たりそうな気がするんだ」

「我々にはレイナ様のご加護がありますからね。きっと百発百中ですよ」


 サディスは兵士の言葉を聞いて小さく笑ったが、すぐに表情を引き締めて敵兵に狙いを定める。そして、矢を放った。



 時刻はお昼を過ぎた。だが、戦場に昼休みなど存在しない。

 いや、攻撃側のルーザス軍の兵士たちは交代で休息を取っている。今日は早朝から戦っているので、このタイミングで軽く栄養を補給する兵士の姿もあった。


(まあ、防衛側かつ数に劣るオレたちには休む余裕なんて無いけどな)


 サディスは内心で毒づく。彼は今も戦況に目を配りつつ、矢を飛ばしている。

 そのとき、伝令とともに北門の応援に行っていた兵士たちが戻ってきた。


「サディス様! 北門の部隊が破城槌を破壊しましたので、戻ってまいりました」


 兵士たちはサディスと交代して門の守備に回る。


「助かったよ。……明日は筋肉痛だな」

「お見事でしたよ。良い抑止になっていたと思います」


 隣にいた兵士が顔を引きつらせていた。



 北門の破城槌を撃破したことで、戦況はスモーフ軍に傾き始めた。

 特に北門攻撃部隊の士気低下が(いちじる)しく、そちらの守備兵を東西に回す余裕すら生まれたほどだ。

 サディスたちがしのぎを削る東門と、名将率いる部隊が攻め寄せる南門は激戦になっているが、日没までに守備を突破するのは不可能だろう。

 ルーザス軍もそれを察したのか、昨日より少し早い時間に銅鑼(どら)の音が響き渡った。



 その日の夜。砦では、恒例の軍議が行われていた。

 西、南、東の順に報告を終え、現在は北門の指揮官が今日の戦闘を伝えている。


「北門では昼を過ぎた頃に破城槌を破壊しました。また、夕方の少し前には敵将を討ち取りました」

「本当か!? でかした!」


 オーズは大いに喜び、他の者たちも明るい顔を見せる。

 だが、彼らはすぐに表情を引き締めた。


「部下たちに確認させたところ、我々が討ち取ったのは部隊の副将だったようです」

「そうか。ご苦労であった」


 オーズが(ねぎら)うと、北門の指揮官は深々と頭を下げた。


「サディス殿、ネスト殿の援軍はいつ頃になるだろうか?」

「早ければ明日ですが、おそらく明後日になるかと」

「そうか……」



 ◇



 一方その頃、ルーザス軍の陣でも諸将が集められていた。


「ぐぬぬ……。北門に配備した破城槌が破壊されただけでなく、副将が討ち取られてしまうとは……」

「カムス様、そろそろ敵の援軍が来る頃合いだと思われます。明日にでも勝負を掛け、全力で落としにかかるべきでしょう」

「サウザン殿の言うとおりです。明日の早朝より、3台の破城槌を同時出して攻撃を仕掛けましょうぞ!」

「僕もマキュラー将軍の意見に賛成です。カムス様、ご決断を!」


 マキュラーとサウザンがカムスにずいっと迫る。

 だが、カムスは決断できずにいた。


「ううむ、破城槌3台で同時攻撃、か……」

「何か気になることが?」


 そのとき、家臣の一人がスッと手を挙げた。


「マキュラー将軍とサウザン殿の案は素晴らしい作戦だと思います。ですが、それは我々に相応しい作戦でしょうか?」

「は?」

「誉れ高きルーザス家とカムス様の名を天下に轟かすためには、攻城兵器による力押しではなく、天下万民をあっと驚かせるような戦いによって砦を攻め落とすべきでしょう!」


 サウザンたちのこめかみに青筋が立つ。だが、カムスは前のめりになって家臣の話に耳を傾けた。


「砦に援軍が来るというのなら、援軍の方から先に蹴散らしてやりましょう! そうすれば砦の兵たちの士気は大きく下がり、おのずと降伏を申し出てくるでしょう」

「それは名案じゃ! あの世にいるクシューの悔しがる顔が目に浮かぶわ」

「勝ち方にこだわっている場合ではありません。今は少しでも可能性の高い策を採用すべきです!」

「サウザン殿の言う通りです! どうか我らの作戦を採用してくだされ!」


 さらに数人の家臣がサウザンたちの案に賛同するが、カムスの心は既に決まっていた。


「いや。まずは敵の伏兵を叩く。明日は朝から軍を動かすから、そのつもりで準備を整えるのだ!」


 カムスは顔を紅潮させて、家臣たちにそう命じた。




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