表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染領主を処刑される運命から救いたくて  作者: myano


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/8

第1話 転換点

「そういえば、今日はレイナ様の誕生日だな」

 レイナが悪夢を見た日の昼下がり。

 とある街の大通りを歩いていた少年――サディス・ハークは、今日が幼馴染の誕生日だったことを思い出した。

 サディスは10年ほど会えていない幼馴染に思いを馳せる。

(そういえば、オレが旅に出るまでは毎日一緒だったな)

 二人は同い年だがサディスの方が先に生まれたこともあり、レイナはまるで妹のように彼の後ろをついて歩いた。

(そうそう。オレが旅に出る日、寂しがったレイナ様が大泣きしたんだよな。懐かしいなぁ)

 サディス自身もボロボロと泣いていたのだが、そのことはすっかり忘れているようだ。


 レイナのことを思い出すうちに、サディスにとある願望が芽生えてきていた。それは――

「久しぶりにレイナ様に会いたくなってきたな」

「今すぐにでも会いに行くべきかと」

「うわぁ!」

 サディスは驚いて立ち止まり、慌てて周囲を見回す。

 そして、存在感の薄い、小さな露店を発見した。

 露店の前には『占』という文字が書かれた看板が出ていて、ローブを着た店主の前には水晶玉が置かれている。

 声の調子からして占い師は女性のようだが、フードを深く被っているせいでサディスからは彼女の顔が見えない。

 サディスは怪訝な表情を浮かべながら露店に近づいた。


「さっき声を掛けてきたのはアンタか?」

「はい。独り言が聞こえてきましたので、助言を差し上げました」

 願望が口から漏れていたこと、そしてその言葉を聞かれてしまったことを知り、サディスは赤面する。彼は恥ずかしさをごまかすように、占い師に尋ねた。

「それで、会いに行くべきっていうのは?」

「あなたを占ったところ、凶兆が見えました。近々、あなたにとって非常に良くないことが起こるでしょう。それに備えて大切な人のそばに居るべきだと申し上げた次第です」

(……昔、誰かに同じことを言われた気がするな)

 どこかで聞いたことのある言葉に感じたが、いつ、誰に言われたのかまでは思い出せなかった。

 やがて、彼は自分の思い違いだと結論付ける。

(まあ良いか。そんなことより修行の方が大事だ)

 サディスはそう考えると、占い師の助言を無視して歩き出そうとした。その時――

(なんだ……これ)

 彼の脳裏に、ある光景が浮かび上がってきた。


 修行を終えて足早に領地に戻るサディス。だが、領地はすでに敵国の手に落ちていて、幼馴染のレイナも死んでいた。それを知った()()()サディスは、深い悲しみと後悔に苛まれて自らの胸にナイフを突き立てる――


「――様、サディス様! しっかりしてください」

 占い師に名前を呼ばれてサディスは我に返る。占い師が心配そうに見つめていた。

(何だったんだ、今のは?)

 先ほど鮮明に浮かんだはずの出来事は、もやがかかったように思い出せなくなっている。サディスの中にあるのは、漠然とした焦燥感だけだった。

「レイナ様を救わないと」

「サディス様? いったい何を――」

「ありがとう! オレ、急いで行くところができたから!」

 そう言いながらサディスは領地に向かって駆け出していく。

 彼の心の中は『幼馴染を救いたい』という思いでいっぱいだった。



 サディスが走り去った後、一人残された占い師は小さく笑みを浮かべる。

「……またお会いできることを楽しみにしていますよ。サディス様」

 彼女はそう言うと、道具を片付け始めた。



 ◇



 ところ変わって、ここはとある国の本拠地。

 この国の当主、カムス・ルーザスが部下から報告を受けていた。

「なにっ!? クシュー・スモーフが死んだ!?」

「はい。『梟雄(きょうゆう)』と恐れられた男も、寿命には勝てなかったようです。スモーフ家はクシューの孫娘である、レイナ・スモーフが継いだとのことです」

 カムスは肩を震わせ、小さな声を漏らす。その声は徐々に大きくなっていった。

「フハハハハ! 遂にあのクシュー・スモーフが死んだか! 奴を失ったスモーフ家などワシの敵ではないわ!」

 カムスは手を叩いて喜ぶ。彼はクシューとの戦いに幾度となく敗れ、領地の一部を奪われていた。

 その恨みを一日たりとも忘れたことはなく、常に復讐の機会をうかがっていたのだ。


「すぐに兵を集めて訓練を施すのだ! スモーフ家に借りを返すぞ!」

「ははっ!」

 命令を受けた家臣が部屋を飛び出していった。

「フフフ。待っておれ、スモーフ家の小娘よ。必ずや貴様を捕らえ、祖父のもとに送ってやるからな!」

 カムスはそう言うと、猟奇的な笑みを浮かべた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ