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「再会の意味」




蝉の声が、少し遠い。


 


 


昔は、もっとうるさかった気がする。


 


 


 


「……行くか」


 


 


 


線香の煙が、ゆっくりと空に溶けていく。


 


 


 


俺は手を合わせ、顔を上げた。


 


 


 


守るものが増えた。


 


 


 


守るべきものが、はっきりした。


 


 


 


それでも――


 


 


 


どこか、空いたままだ。


 


 


 


 


「……相馬」


 


 


 


声。


 


 


 


 


止まる。


 


 


 


 


背中が、知っている。


 


 


 


 


この声を。


 


 


 


 


振り返らなくても、


 


 


 


分かる。


 


 


 


 


「……久しぶりだな」


 


 


 


 


ゆっくりと振り返る。


 


 


 


 


そこにいた。


 


 


 


 


黒いスーツ。


 


 


 


 


白いシャツ。


 


 


 


 


銀のカフス。


 


 


 


 


――そして


 


 


 


 


変わらない目。


 


 


 


 


「……世古……さん」


 


 


 


 


名前が、


 


 


 


喉に引っかかる。


 


 


 


 


 


「おいおい」


 


 


 


 


世古が笑う。


 


 


 


 


「“さん”はいらねぇだろ」


 


 


 


 


 


15年。


 


 


 


 


その時間が、


 


 


 


一瞬で、


 


 


 


消える。


 


 


 


 


 


「……生きてたのかよ」


 


 


 


 


 


「勝手に殺すなよ」


 


 


 


 


 


軽い。


 


 


 


あまりにも軽い。


 


 


 


 


でも、


 


 


 


その奥にあるものを、


 


 


 


俺は知っている。


 


 


 


 


 


「……なあ」


 


 


 


 


俺は、聞く。


 


 


 


 


 


「全部、終わったのか?」


 


 


 


 


 


沈黙。


 


 


 


 


 


風が、


 


 


 


少しだけ強くなる。


 


 


 


 


 


「……どう思う?」


 


 


 


 


世古が、


 


 


 


逆に聞く。


 


 


 


 


 


「……終わってねぇ顔してる」


 


 


 


 


 


「だろうな」


 


 


 


 


 


世古は、


 


 


 


空を見る。


 


 


 


 


 


「まだだ」


 


 


 


 


 


「何一つ、終わっちゃいねぇ」


 


 


 


 


 


その言葉で、


 


 


 


 


確信する。


 


 


 


 


 


(あの日の続きだ)


 


 


 


 


 


あの戦い。


 


 


 


黒帝。


 


 


 


あの“見えなかった何か”。


 


 


 


 


全部、


 


 


 


まだ、


 


 


 


繋がっている。


 


 


 


 


 


「……相馬」


 


 


 


 


世古が、


 


 


 


俺を見る。


 


 


 


 


 


あの時と同じ目。


 


 


 


 


 


「準備はいいか?」


 


 


 


 


 


 


その一言で、


 


 


 


 


心臓が、


 


 


 


跳ねる。


 


 


 


 


 


警察官。


 


 


 


 


父親。


 


 


 


 


夫。


 


 


 


 


 


全部、


 


 


 


今の俺だ。


 


 


 


 


 


でも――


 


 


 


 


 


それでも、


 


 


 


 


 


「……何のだよ」


 


 


 


 


 


分かってるくせに、


 


 


 


聞く。


 


 


 


 


 


世古が、


 


 


 


笑う。


 


 


 


 


 


「決まってんだろ」


 


 


 


 


 


 


一歩、


 


 


 


近づく。


 


 


 


 


 


「続きだよ」


 


 


 


 


 


 


 


その瞬間。


 


 


 


 


 


世界が、


 


 


 


少しだけ、


 


 


 


歪んだ気がした。


 


 


 


 


 


(……いる)


 


 


 


 


 


見えない。


 


 


 


 


 


でも、


 


 


 


 


確実に、


 


 


 


 


 


“見られている”。


 


 


 


 


 


 


俺は、


 


 


 


ゆっくりと、


 


 


 


息を吐いた。


 


 


 


 


 


「……やれやれ」


 


 


 


 


 


笑う。


 


 


 


 


 


「休暇、終わりかよ」


 


 


 


 


 


世古も、


 


 


 


笑う。


 


 


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 


 


「ここからが、本番だ」


 


 


 


 


 


 


蝉の声が、


 


 


 


やけに、


 


 


 


遠く聞こえた。


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