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「静かな戦争」




朝。


 


 


いつも通りの朝。


 


 


 


「おはようございます、副校長先生」


 


 


 


「ああ、おはよう」


 


 


 


変わらない日常。


 


 


 


変わらない風景。


 


 


 


子どもたちの声。


 


 


 


教員たちの慌ただしさ。


 


 


 


 


――なのに。


 


 


 


 


(……おかしい)


 


 


 


 


俺は、


 


 


 


気付いている。


 


 


 


 


“何か”が、


 


 


 


ズレている。


 


 


 


 


 


職員室。


 


 


 


 


「副校長先生、昨日の件ですが――」


 


 


 


 


報告を受ける。


 


 


 


 


内容は、


 


 


 


 


いつも通り。


 


 


 


 


些細なトラブル。


 


 


 


 


保護者対応。


 


 


 


 


 


――だが。


 


 


 


 


(情報が揃いすぎてる)


 


 


 


 


違和感。


 


 


 


 


まるで、


 


 


 


 


“誰かが整えた”みたいに。


 


 


 


 


 


「……分かった、ありがとう」


 


 


 


 


俺は、


 


 


 


それ以上聞かない。


 


 


 


 


 


(下手に掘るな)


 


 


 


 


本能が言っている。


 


 


 


 


 


その時。


 


 


 


 


ポケットのスマホが震える。


 


 


 


 


 


非通知。


 


 


 


 


 


(……来たか)


 


 


 


 


出る。


 


 


 


 


 


「……もしもし」


 


 


 


 


 


『静かだね』


 


 


 


 


 


声。


 


 


 


 


 


聞いたことがある。


 


 


 


 


 


いや、


 


 


 


 


“忘れられない声”。


 


 


 


 


 


『君の周りは、平和そうだ』


 


 


 


 


 


「……何者だ」


 


 


 


 


 


沈黙。


 


 


 


 


 


そして、


 


 


 


 


 


『まだ分からないか』


 


 


 


 


 


 


その瞬間。


 


 


 


 


 


背筋が冷える。


 


 


 


 


 


(こいつだ)


 


 


 


 


 


過去。


 


 


 


 


黒帝。


 


 


 


 


 


あの、


 


 


 


“見えなかった存在”。


 


 


 


 


 


「……何の用だ」


 


 


 


 


 


『挨拶だよ』


 


 


 


 


 


軽い。


 


 


 


 


あまりにも軽い。


 


 


 


 


 


『再開のね』


 


 


 


 


 


ブツッ


 


 


 


 


通話が切れる。


 


 


 


 


 


 


「……はあ」


 


 


 


 


 


ため息。


 


 


 


 


 


だが、


 


 


 


 


笑っている自分がいる。


 


 


 


 


 


(来たな)


 


 


 


 


 


その時。


 


 


 


 


 


ドンッ


 


 


 


 


 


遠くで、


 


 


 


 


何かが倒れる音。


 


 


 


 


 


「……?」


 


 


 


 


 


職員室がざわつく。


 


 


 


 


 


「体育館の方で、生徒が倒れたらしいです!」


 


 


 


 


 


「副校長先生!」


 


 


 


 


 


「……行く」


 


 


 


 


 


走る。


 


 


 


 


 


体育館。


 


 


 


 


 


そこには、


 


 


 


 


倒れている生徒。


 


 


 


 


 


意識なし。


 


 


 


 


 


外傷は――ない。


 


 


 


 


 


「救急車を呼べ」


 


 


 


 


 


指示を出しながら、


 


 


 


 


俺はしゃがむ。


 


 


 


 


 


(……違う)


 


 


 


 


 


これは、


 


 


 


 


普通の倒れ方じゃない。


 


 


 


 


 


その時。


 


 


 


 


 


視界の端。


 


 


 


 


 


“影”が、


 


 


 


 


揺れた。


 


 


 


 


 


(……いる)


 


 


 


 


 


見えない。


 


 


 


 


 


でも、


 


 


 


 


いる。


 


 


 


 


 


そして、


 


 


 


 


 


耳元。


 


 


 


 


 


『どう?』


 


 


 


 


 


声。


 


 


 


 


 


『守れる?』


 


 


 


 


 


 


一瞬、


 


 


 


 


世界が止まる。


 


 


 


 


 


だが――


 


 


 


 


 


「……なめるなよ」


 


 


 


 


 


俺は、


 


 


 


 


小さく呟く。


 


 


 


 


 


「ここは学校だ」


 


 


 


 


 


「お前らの遊び場じゃねぇ」


 


 


 


 


 


沈黙。


 


 


 


 


 


 


『……いいね』


 


 


 


 


 


声が、


 


 


 


 


笑う。


 


 


 


 


 


『やっぱり君は、選ばれた側だ』


 


 


 


 


 


 


気配が消える。


 


 


 


 


 


 


救急車のサイレン。


 


 


 


 


 


現実が戻る。


 


 


 


 


 


 


俺は、


 


 


 


 


立ち上がる。


 


 


 


 


 


(……戦場か)


 


 


 


 


 


学校。


 


 


 


 


 


警察。


 


 


 


 


 


日常。


 


 


 


 


 


全部、


 


 


 


 


 


戦場になっている。


 


 


 


 


 


 


 


「……やれやれ」


 


 


 


 


 


小さく笑う。


 


 


 


 


 


 


「副校長、忙しいんだけどな」


 


 


 


 


 


 


戦争は、


 


 


 


 


 


静かに、


 


 


 


 


 


始まっていた。


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