「黒帝決戦」
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夜。
風が止んでいた。
皇丸、全戦力。
黒帝、全戦力。
対峙。
「……来たか」
坂寺が笑う。
その背後。
“異様”な圧。
数じゃない。
質でもない。
“統制”。
まるで一つの生き物のように、
黒帝は、そこにいた。
「総長」
緋村が小さく言う。
「……います」
「奥に」
「……ああ」
世古は頷く。
(見えない)
だが、
“いる”。
「行くぞ」
その一言で、
世界が動く。
――開戦。
相馬が裂く。
最速。
風を置き去りにして、
敵陣へ突っ込む。
源田が潰す。
真正面から、
力でねじ伏せる。
藤原が受ける。
崩れない。
どれだけ叩かれても、
立っている。
武田が押す。
機動。
流れ。
戦場そのものを動かす。
山下が、
“砕く”。
ただ一人で、
壁を破壊する。
そして――
世古。
一直線。
迷いがない。
狙いはただ一つ。
坂寺。
「来いよ」
坂寺が笑う。
ぶつかる。
音が消える。
衝撃だけが、
空間を歪ませる。
「はっ……!」
坂寺の拳。
世古が受ける。
踏み込む。
返す。
「……いいな」
坂寺が笑う。
「やっぱりお前か」
「何がだ」
「“壊す側”の人間だってことだよ」
世古は答えない。
ただ、
一歩、
深く入る。
――決着。
坂寺が膝をつく。
静寂。
「……終わりか」
藤原が呟く。
「いや」
緋村が、
首を振る。
その瞬間――
空気が、
“裂けた”。
全員が、
止まる。
「……は?」
源田が初めて、
声を失う。
“それ”は、
そこにいた。
だが、
誰も、
“認識できない”。
見えているのに、
分からない。
「……ようやく」
声。
「ここまで来たか」
坂寺が、
笑う。
「……あんたか」
世古が、
初めて、
止まる。
「そうだ」
「黒帝は――」
「俺じゃない」
その瞬間。
全員が理解する。
(こいつだ)
だが――
遅い。
「いいよ」
“それ”が笑う。
「今回は、ここまででいい」
「……逃げるのか」
世古が言う。
「逃げる?」
「違う」
「終わらせないだけだ」
「君たちが面白いからね」
気配が、
消える。
静寂。
誰も、
動かない。
「……なんだ、あれ」
武田が呟く。
「……分からん」
藤原が答える。
源田は、
笑わない。
緋村は、
目を伏せる。
山下は、
拳を握る。
そして――
世古。
「……なるほど」
小さく、
笑う。
「いいね」
「これで分かった」
「まだ、“上”がいる」
風が吹く。
戦いは、
終わった。
だが――
戦争は、
まだ、
始まったばかりだった。




