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「先制」




夜。


 


静かすぎる夜だった。


 


 


皇丸の拠点。


 


 


誰もが、次を待っていた。


 


 


戦争の気配。


 


 


嵐の前の、あの妙な静けさ。


 


 


 


「……遅いな」


 


 


源田がぼそりと呟く。


 


 


 


「何がだよ」


 


 


藤原が煙草を咥えながら返す。


 


 


 


「黒帝だよ」


 


 


「来るなら来るで、さっさと来りゃいい」


 


 


 


「……来ねぇ方が気持ち悪ぃだろ」


 


 


 


武田は壁にもたれ、


 


 


目を閉じている。


 


 


 


山下は、外を見ている。


 


 


 


緋村は――


 


 


何も言わない。


 


 


 


そして、


 


 


 


世古。


 


 


 


 


「……」


 


 


 


静かに座り、


 


 


 


ただ、


 


 


考えている。


 


 


 


 


その時だった。


 


 


 


 


――コン。


 


 


 


 


軽い音。


 


 


 


 


あまりにも、


 


 


軽すぎる音。


 


 


 


 


 


「……?」


 


 


 


 


山下が振り返る。


 


 


 


 


ドア。


 


 


 


 


誰も触れていないはずのドアが、


 


 


 


わずかに、開いている。


 


 


 


 


 


「……おい」


 


 


 


 


源田が立ち上がる。


 


 


 


 


 


「誰だ」


 


 


 


 


 


返事はない。


 


 


 


 


 


だが、


 


 


 


 


“いる”。


 


 


 


 


 


 


空気が、


 


 


 


一瞬で変わる。


 


 


 


 


 


「……」


 


 


 


 


緋村の目が、


 


 


 


わずかに揺れる。


 


 


 


 


 


(まずい)


 


 


 


 


その瞬間――


 


 


 


 


ドンッ


 


 


 


 


 


衝撃。


 


 


 


 


 


武田の身体が、


 


 


 


壁に叩きつけられる。


 


 


 


 


 


「――ッ!!?」


 


 


 


 


誰も、


 


 


 


“動き”を見ていない。


 


 


 


 


 


「は……?」


 


 


 


 


藤原が固まる。


 


 


 


 


 


「……今の、何だ?」


 


 


 


 


 


次の瞬間。


 


 


 


 


 


山下が、


 


 


 


拳を振るう。


 


 


 


 


 


空間に向かって。


 


 


 


 


 


ドゴォッ


 


 


 


 


 


何かを、


 


 


 


捉えた。


 


 


 


 


 


「……いるな」


 


 


 


 


 


低い声。


 


 


 


 


 


だが、


 


 


 


 


“見えない”。


 


 


 


 


 


「チッ……!」


 


 


 


 


源田が踏み込む。


 


 


 


 


 


その瞬間――


 


 


 


 


 


ガンッ


 


 


 


 


 


源田の身体が、


 


 


 


地面に叩きつけられる。


 


 


 


 


 


「……はは」


 


 


 


 


 


血を吐きながら、


 


 


 


笑う。


 


 


 


 


 


「いいねぇ……!」


 


 


 


 


 


だが、


 


 


 


 


立てない。


 


 


 


 


 


 


「総長」


 


 


 


 


緋村が、


 


 


 


初めて声を低くする。


 


 


 


 


 


「これは――」


 


 


 


 


 


「“攻撃”ではありません」


 


 


 


 


 


「……ああ」


 


 


 


 


世古が、


 


 


 


ゆっくり立ち上がる。


 


 


 


 


 


「分かってる」


 


 


 


 


 


 


その瞬間。


 


 


 


 


 


耳元。


 


 


 


 


 


「――こんばんは」


 


 


 


 


 


声。


 


 


 


 


 


すぐ横。


 


 


 


 


 


だが、


 


 


 


 


“姿がない”。


 


 


 


 


 


 


「……」


 


 


 


 


世古は、


 


 


 


動かない。


 


 


 


 


 


「へぇ」


 


 


 


 


 


声が笑う。


 


 


 


 


 


「怖がらないんですね」


 


 


 


 


 


「怖い?」


 


 


 


 


世古が、


 


 


 


わずかに笑う。


 


 


 


 


 


「面白いだけだろ」


 


 


 


 


 


沈黙。


 


 


 


 


 


一瞬だけ。


 


 


 


 


 


 


「……やっぱり」


 


 


 


 


 


「あなたは、“当たり”だ」


 


 


 


 


 


次の瞬間――


 


 


 


 


 


気配が、消える。


 


 


 


 


 


 


静寂。


 


 


 


 


 


「……逃げたか」


 


 


 


 


藤原が吐き捨てる。


 


 


 


 


 


「違う」


 


 


 


 


緋村が、即座に否定する。


 


 


 


 


 


「これは――」


 


 


 


 


 


「“確認”です」


 


 


 


 


 


 


世古は、


 


 


 


何も言わない。


 


 


 


 


 


ただ、


 


 


 


 


床を見る。


 


 


 


 


 


武田。


 


 


 


源田。


 


 


 


 


どちらも、


 


 


 


戦闘不能ではない。


 


 


 


 


 


だが――


 


 


 


 


“抑えられた”。


 


 


 


 


 


完全に。


 


 


 


 


 


 


「……なるほど」


 


 


 


 


 


世古が、


 


 


 


静かに呟く。


 


 


 


 


 


「いいね」


 


 


 


 


 


「来たな」


 


 


 


 


 


その目は、


 


 


 


笑っている。


 


 


 


 


 


だが――


 


 


 


 


 


その奥で、


 


 


 


初めて。


 


 


 


 


 


“ズレ”が生まれていた。


 


 


 


 


 


(……見えなかった)


 


 


 


 


 


(完全に、だ)


 


 


 


 


 


戦争は、


 


 


 


 


 


一方的に、


 


 


 


 


 


“始められていた”。


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