才能の器
……………………………………………………。
…………………………………………。
「…………………………………。
……………………………………………………。
………………………………………………………………。
いやいや、いやいやいや…………………………………」
映画だったら、あまりにも無理がある急展開すぎて、観客はポップコーンを口から吹き出し、選定基準不明な映画評論家からは非難を轟々に浴びていること間違いない。
だって僕は今、ただのフリーターなのである。
暫定、スーパーアイドルの脛をかじる立派なヒモライフが幕開けしそうになっているのである……。
そんな素晴らしい才能があれば、セナの隣でさぞ、
アイドルとして華々しいステージに立っていたことであろう。
確かにセナからの妨害はあったようだし、
デビューさせるつもりだったという事務所の証言はあるものの、事務所を退所すると告げた僕に、君には才能がある!!事務所に残ってくれ!!
という人間は現れることはなかった……。
まあ、つもりはそういうことなのである……。
「……でも、……!…………」
「……ショウマの才能が上手く発揮されなかったのは、僕がセナで春風じゃないから…………………………」
「……いや、むしろ、春風さんも自覚があったようだけど、セナは春風さんの最高傑作だろ…!…」
「……もちろんね、春風さんにとんでもない才能があったっていうのは、僕もわかってるよ……
お手本の春風さんを見て、僕の心はへし折られたんだから!!!!オーラもファミレスには相応しくない、とんでもないビームを放ってたしね……!!!!!!!!!」
「まあ、つまり!素晴らしい才能を持つ春風さんも僕らと同じ人間ってことだよ!!」
セナはそれっきり黙りこくり、
僕は、春風さんがそういうってことはもしかして僕自身には素晴らしいアイドルの才能があるのでは!?と軽くワクワクしてみたものの、自宅警備員という現在の職業が余計に心にグサグサ刺さっていくだけだった…。
だけど、そうか、……
もし仮にそんな素晴らしい才能が
僕自身にあるとして……………………………………。
僕がセナになったとして、きっと同じように過ごしても、セナのように綺麗に枠を突き破った六角形いや百角形になるのだろうか。
身体はただの才能の入れ物に過ぎないのだろうか……
という僕の問いは…………………………………………。
その答えは…、きっと春風さんはわかってたんだ。
だからアイドルの夢も、何故か気に入った僕のこともセナに託したんだ……。
素晴らしい才能の持ち主である春風さんは一世一代の勝負に勝って、素晴らしい才能を持っている可能性のある凡人の僕は勝負に負け、………………………………
戦力外通告を受けた…………。
……………………ゆっくりと息を吐く。
ずっと心につっかえていたアイドルの夢が、セナとの美しい思い出にスッポリと描きかわった、そんな心地がした…………………………………………。




