依頼に向けて 5
その言葉の直後、ルーチェとポラーレの間に人影が割り込んできた。視界の端でツインテールが揺れていた。
「マスター! オリチェ、チケット持ってるから、ぜぇったい行きますからね!」
「わかってるわよぉ。オリチェちゃぁんが行ってる間は、ピエノパッチは少しゆっくりめにするから大丈夫よぉん。それにぃ……」
マスターがルーチェへと手を伸ばしてきた。その手がカウンター越しにルーチェの肩をつかんだ。
「ルーチェちゃぁんがぁ、一緒にいってくれるわよぉん!」
「えっ?」
ルーチェの真横にいたオリチェの目が大きく見開かれた。それはレンズ越しでもはっきりとわかるほどだった。ズイッと顔を近づけてきたオリチェ。今度はルーチェが壁の方へと下がる。その動きに合わせて、マスターの手が離れた。
「いいんですか!? ルーチェさん! オリチェと一緒に行ってくれるんですか!?」
ルーチェの視界はオリチェの顔でいっぱいになった。わずかに紅潮した肌を見せつけ、浅い呼吸を繰り返していたオリチェ。ただ、その呼気は強く、ルーチェの顔を撫でていった。
「わ、わたし、は……」
オリチェの目線を避け、カウンターの方に目線を向ける。しかし、そこにいるマスターは手を小さく振りながら、よろしくねぇん、とつぶやいていた。
「ポラーレの依頼もあるし……それに……」
言いかけて口を閉ざすルーチェ。目の前にいるオリチェの表情がみるみるうちに曇っていったのが見える。ルーチェは何も言うことができないでいる。そこにオリチェが先に口を開いた。
「ルーチェさん。それに、何ですか?」
「私は、姉さんを捜したい」
ルーチェはハッキリと通る声を発しながら、オリチェから視線を外す。その視線はルーチェの手元のコップへと向けられる。
「ルーチェさん……」
トーンの下がった声がルーチェの頭の上に落ちてきた。その声かけに小さく身体が震えるが、それ以上の動きをルーチェは見せない。
「マスター。こういうのはどうでしょう?」
ポラーレの声がルーチェの耳に届く。
「オリチェさんと一緒に行くのはルーチェさんとアナリズさん。二人にするというのは?」
「えっ!?」
「おもしろいこと言うわねぇん。それでぇ?」
ルーチェの近くでオリチェの大きな声が聞こえた。そのあと、マスターのゆっくりと話を促す言葉が聞こえてきた。
「護衛は二人で行っていただき、仮に道中でリナシッタさんの行方に関わる情報が手に入った時には、ルーチェさんはそちらを優先してもらう。これでしたら、誰も損をすることはないと思いますがどうでしょうか?」
「あ、あのー、僕の意見は?」
「アナリズさん。反対でも同じです。あなたが捜している人の手がかりが見つかれば別行動をとればいい。流石に二人とも情報を見つけた時は、少々ご相談ということになりますが……。オリチェさんを一人にするのは困りますので」
「この人がいるくらいなら、オリチェ一人の方がいいんですけど」




