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つぎはぎ  作者: 妄想する紙片
2nd ストーリー
317/322

依頼に向けて 4

 ポラーレがカップを置いてからマスターの方を向いて口を開いた。


「そうですね。ちょうど国境沿いになりますね。テレノフェテルはコメチャイル国。プリーフケートはポリタズ国側ですが」


「よねぇん」


 ゆっくりと一言だけ発して、マスターはルーチェを見た。その視線にルーチェは身体を少しだけ後ろに下げた。イスの足がわずかに動くが、ルーチェは何とかバランスを取って倒れるのを防ぐ。ルーチェがマスターの顔を見る。瞬間、マスターの表情が変化し、右の口角だけがにゅっと上がった。ルーチェの背中に冷たいものが流れていく。


「…………な、何?」


 かろうじて声を絞り出すルーチェ。マスターが前のめりになって、ルーチェの顔をのぞき込んできた。んふふ、と言いながらマスターが話し始めた。


「ちょぉっと、お仕事、お願いできないかなぁって、ねぇ」


「な、何を……ですか?」


 ルーチェが詰まりながらたずねる。それを聞いたマスターの左側の口角も上がっていった。その表情に再びルーチェが身を引いた拍子にイスの足がわずかに浮き、音も立てずに床に置かれた。


「かんたんな、お、し、ご、とぉ。プリーフケートまでぇ、行ってきてぇ、くれないぃ?」


「はっ?」


 ルーチェが間の抜けた声をあげる。それは表情にもはっきりと表れ、片方の眉があがり、もう片方の眉が下がっていた。下がった眉の方へとほんの少し首を傾げていた。


「なんで?」


 疑問をそのまま口にした。


「それはねぇん……」


 いいながら、マスターは壁にかけられたディスプレイへと手を向けた。それに促されるようにして、身体ごと顔をディスプレイへ向けたルーチェとポラーレ、そして、アナリズ。そこには五人の男性が映っていた。同じようなデザインの衣装だったが、左腕の二の腕の部分だけはそれぞれ異なる色になっていた。その五人が踊りながら歌っていた。時には同じような動き、また、時にはそれぞれ別の個性を持たせた動きを見せていた。


 そのディスプレイの真下にはいつの間にかオリチェが立っていた。後ろ姿の彼女は小さく揺れながら、ディスプレイが見える角度に頭を向けていた。


 ルーチェがディスプレイからマスターへと顔を向けなおすと、すぐにマスターが手を振った。


「ディスプレイをみなさぁい」


 促され視線を戻すと、五人の姿の代わりに文字が映されていた。


 ライブまであと四日。


 その言葉が映し出された時、再び五人の姿がシルエットからゆっくりと浮かび上がってきた。


「ま、まさか、マスター……」


「さすがルーチェちゃぁん。察しがよくて助かるわぁん」


 マスターは両手を組んで顔の横に持ってきていた。そのまま少し首を傾げていた。


「ご・え・い。お願いねぇん」


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