依頼に向けて 3
マスターがポラーレの方を向き、円柱形で取っ手のないカップを置いた。濃い緑色をしたそのカップからは白い湯気があがっていた。ポラーレは両手でそれを持った。その隣に座るアナリズにはオレンジ色の液体が入ったコップを置いた。
「これはこれは。ありがとうございます、マスター。それで何かありましたか?」
「ポラーレちゃんはぁ、ルーチェちゃぁんに何を頼んだのぉ?」
「ああ、そのことですか。ちょっとほしい本が見つかりまして。代わりに取りに行ってもらうようにお願いしたんです」
ズズッと音を立てながら、ポラーレが円柱形のカップの中身に口をつけた。瞬間的にメガネが真っ白に曇り、カップを口から離したポラーレ。
「濃いお茶ですね。マスター奮発されました?」
「ちょぉっと、入れ過ぎちゃっただけよぉん。ポラーレちゃんならこれぐらいでも良いかなぁってねぇ」
マスターの返答を聞きながら、もう一度口をつけたポラーレ。今度はメガネが曇ってもそのまま飲み続けていた。
「ポラーレちゃん。本なんて貴重品はぁ、自分で取りに行きたいんじゃぁないのぉ?」
コトリとカップをカウンターに置いたポラーレ。曇ったメガネを一度外し、どこからか取り出したハンカチでレンズを拭い始めた。
「マスターのおっしゃる通りなんですがね。今回はどうしても外せない用事がありまして……。受け取るだけ、といったら失礼ですが、戦うことはないかと思いまして、リハビリがてら受け取ってもらおうかと」
言い終えると同時にメガネをかけたポラーレ。マスターはポラーレの言葉を聞いて、カウンターから身を乗り出しそうなほどに前のめりになった。
「……その言い方だとぉ、どっかに取りに行かせるってことよねぇん? もしかして、この街じゃないのぉ?」
「ええ、知人の伝手で見つけた本でして……。テレノフェテルに受け取りに行ってもらうつもりです。何かありましたか、マスター。顔がニヤついていますよ」
ポラーレの言葉につられて、ルーチェはマスターの方へと視線を向ける。確かにそこには頬が緩んでいるマスターがいた。ルーチェにみられていることに気付いたのか、マスターがルーチェの方へと近づいてきた。
「ルーチェちゃぁん。テレノフェテルにはぁいつ行くのぉ?」
「一応、三日後についていれば良いらしい」
「ふぅん……」
マスターは身を起こして、自分のグラスの液体を口につけた。つられたようにルーチェ、アナリズ、ポラーレの順に自分の目の前にあった飲み物を口につけていった。
最初にグラスを置いたのはマスター。
「ポラーレちゃん。テレノフェテルってぇ、ポリタズとの国境沿いでぇ、合ってるわよねぇん? その次の街はプリーフケートよねぇん?」




