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つぎはぎ  作者: 妄想する紙片
2nd ストーリー
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依頼に向けて

「ルーチェちゃぁん! 動けるようになったのねぇん!」


 ルーチェがピエノパッチに入ると、いきなり粘っこい女性の声が耳に飛び込んできた。店の喧噪よりもそれははっきりと聞こえる。視線を向けると、客席側に一人の人物がルーチェを見ていた。パッと見た限り、男性とも女性ともとれる容姿。白のワイシャツに黒のベストにネクタイ。黒のズボンの上には茶色のカフェエプロン。その人の近くにはポラーレとアナリズがいた。


 その女性は二人を押しのけ、ルーチェへと両手を広げて走ってきた。階段を下りてすぐのドアのところで動けずにいるルーチェ。近くの壁に手をついて身構える。カウンターを通り抜けた女性がルーチェへと飛びつこうとしていた。


「マスター! 落ち着いて!」


 ルーチェの前にオリチェが立ちはだかって、マスターと呼ばれた女性の動きをさえぎった。


「えっ、あっ!」


「ちょっ!? マスター!」


 加速していたマスターは止まれるはずもなく、オリチェにぶつかった。二人はそのまま一緒になって床に倒れ込んでいった。ルーチェの足元に二人が倒れてきた。イタタッ、と小さくいいながら起き上がってきたのは、上になっていたマスターだった。


「ルーチェちゃぁん。良かったわぁん。元気になったのねぇん」


「ま、マスター。ルーチェさんの心配もいいですけど、オリチェのこと忘れないでください……」


 マスターの下で抗議の声を上げたオリチェ。少しずれたメガネの位置を倒れたまま片手で直していた。もう一方の手で、覆いかぶさっていたマスターの身体を押し上げていた。


「ごめんねぇ、オリチェちゃぁん。でもぉ、いきなり目の前にあらわれたらぁ、危ないじゃなぁい?」


「何言ってるんですか? マスター!?」


 声を荒げながら、オリチェはマスターを押しのけて身体を起こした。マスターもオリチェの上から避けて、横へと座った。重さが抜けたオリチェは埃を払いながら立ち上がった。すぐに座り込んだままのマスターに上から顔を近づけた。両手はオリチェ自身の腰に握りこぶしの形であてられていた。


「ルーチェさんはケガ人です。今日は動けるようになりましたけど、昨日までずっと寝ていたんですよ! そんな人に飛びついたらケガだけじゃすまないでしょう? 嬉しいのはわかりますけど、落ち着いてください!」


 オリチェの言葉がルーチェの耳にも届く。しかし、客席の様子に変化はなかった。オリチェの声はカウンターの内側だけで聞こえていた。ルーチェからはオリチェの顔が見えず、背中しか見えない。ただ、その肩はわずかに震えていた。


「そ、そうねぇん。ルーチェちゃぁんごめんなさぁい」


 座ったままだったが、姿勢だけは整えて頭を下げたマスター。


「マスター。それオリチェにもいってくださいね」


 釘を刺したオリチェ。マスターはオリチェにも頭を下げた。


「わかってくれたのなら」


 そう言ってオリチェはマスターに手を伸ばした。マスターは顔をあげ、手を見た後にオリチェの顔を見た。オリチェが頷いた。マスターはゆっくりと手をつかんだ。つかんだのを確認したオリチェがマスターを引っ張り起こした。


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