新たな依頼 6
「ルーチェさん。入りますね」
オリチェの声が聞こえ、ドアが開いた。
「マスターがもし、起きて動けるのなら――って、立ってる!?」
ルーチェの部屋の中をオリチェの声が駆け巡っていった。そのあまりの声の大きさにアナリズとポラーレはとっさに耳を塞いだ。ルーチェは腕が動き切らず、まともに大音量を聞いてしまう。そのあまりにも大きな声にルーチェはベッドに座り込み、目を閉じて顔を伏せる。
ルーチェの姿を見たオリチェがコップをキュッと強く胸元に抱えながら走りこんできた。耳を塞いでいたアナリズを押しのけて、オリチェがルーチェの前に来た。
「ルーチェさん! ごめんなさい! オリチェがおっきな声出しちゃって」
オリチェがさっきよりも抑えめの声で謝り、深々と頭を下げた。
ルーチェはそのオリチェに向かって声をかける。
「大丈夫。大したことはなかったから。それでマスターが何?」
右手で右耳を塞ぎながら、話を促すルーチェ。オリチェは頭をあげて、手の中にあったコップに、デキャンタから水を汲んでルーチェに渡してきた。ルーチェはそれを静かに受け取る。
「マスターから、ルーチェさんが起きているなら話があるって。動けるのなら呼んできてほしいって、オリチェ、いわれました。動けそうにないなら、マスターが直接上がってくるんで教えてって」
オリチェが矢継ぎ早にルーチェへとしゃべってきた。ルーチェは受け取ったコップの水を飲みながら、オリチェの話を聞いている。半分ほど飲んでコップから口を離すルーチェ。口を開くことはなく、コップを見ている。それから残った水をゆっくりと飲み干す。
「ふぅ……」
息をつくルーチェ。コップをデキャンタの横に置こうとして手を伸ばす。オリチェがコップを受け取って、デキャンタの横に置いた。
それを見たルーチェは自分の膝に手を置いてゆっくりと立ち上がった。わずかにふらりと揺れるが、倒れることなく持ちこたえる。オリチェとアナリズがとっさに支えようと動いていた。
「大丈夫……オリチェ、行こうか」
「んー。わかりました。行きましょうか、ルーチェさん」
「アナリズさん。こちらも行きましょう。女性の部屋に男だけが残るのは失礼です」
立ち上がりながら話しかけたポラーレ。そのポラーレの言葉に頷いたアナリズはルーチェたちよりも先に部屋から出ていく。それについていったポラーレ。オリチェはルーチェの歩く速さに合わせて一緒に部屋を出ていった。




