新たな依頼 4
ルーチェが制止の声をあげる。アナリズの伸ばしかけた両腕がピタリと止まった。アナリズの目が左右に動いていた。ポラーレはレンズ越しにじっとアナリズを見ていた。
「す、すいません」
「いえ。落ち着かれたのであれば構いませんよ」
口角を上げたポラーレ。
「しかし、どうしたのですか? 落ち着きがなくなるなんて珍しいことだと思いますが?」
「それは——」
「ポラーレ。私も聞いたことがあるような気がする。どこで聞いたかまでは思い出せないけど……」
アナリズの言葉をさえぎって話すルーチェ。言葉を重ねられたアナリズはルーチェの方を見たが、ルーチェは小さく首を縦に動かしてアナリズを見る。それからポラーレに視線を戻す。
「私とポラーレ。二人が聞いたことがあるということは、その時一緒にいた。それがいつなのかはわからないけど」
「そうですね。そう考えるのが自然でしょう。ですが、それがいつなのかはわかりませんが……」
そういってポラーレは手帳へと視線を戻した。慎重に手帳をめくりながら、ポラーレが言葉を続けてきた。
「いずれにしても調べてみます。こちらの依頼については、目的地がわかっていますので、お二人の捜索者の足取りを追いながら、一緒にこなしていただけると助かります」
「どうする、アナリズ?」
「……わかりました」
短く答えたアナリズは視線をそらした。アナリズの様子を見ていたルーチェは、アナリズへは何も言わず、ポラーレを見る。
「とりあえず、二人で対応する」
言ってから視線を外し、大きく息を吐き出すルーチェ。ルーチェの様子をポラーレとアナリズは見ていたが、口を開くことはなかった。
ルーチェが視線をあげたのを確認したポラーレが口を開いた。
「お二人ともお願いします」
「それで、ポラーレ。受け取ってきてほしい本についての詳細を教えて」
「わかりました。まず、本の名前ですが、『二面の聖女』と言います。中身についてはわかりません。これは読んでいないので当たり前ですね」
「ん? 読んでないのにほしい?」
ルーチェの問いにポラーレは首を横に振った。
「違いますよルーチェさん。読んだことがないからこそ見てみたいんです。そこにどのようなことが書かれているのか、どんな思いがあるのか」
「そういうもの……?」
「そういうものです」
小首を傾げながら、少し間を空けて首肯をするルーチェ。
「ぽ、ポラーレさん」
「何ですか? アナリズ」
「その本は今どこにあるんですか?」
アナリズの問いにポラーレの口角が両方とも上がっていった。そして、アナリズの方を見ながら答えた。




