新たな依頼 3
「ルーチェさんにお願いしたいのは、本の受け取りになります。ただ、どこにでもある本というわけではないんです」
「どういうこと?」
眉間にしわを寄せながら、ルーチェはたずねる。その様子を見ていたポラーレが小さく首を横に振った。
「簡単に言えば自費製作された本のようです。ですので、この世に一冊しかないという本になりますね」
「自費製作? この時代にそんなことをした人がいると?」
「ええ。珍しいことだというのはわかっています。紙の本はほとんど廃れているというのにも関わらずです。何らかの理由で残したかった、ということでしょう」
「それを探すポラーレ。あなたも似たようなもんよ」
「もともと、紙の本が好きなのでね……今回はこの世に一つしかないと聞きましたので」
ポラーレは手の中にあった手帳を閉じてわずかにあげた。
「その本にはいったい何が書かれているの?」
「……わかりません。ですので、ぜひ読みたいと思っているのです」
視線を少しだけあげ、ポラーレは手帳を胸に抱えながら静かに告げた。その瞳ははっきりと輝いていた。ルーチェの眉間のしわは伸びず、むしろ深くなりそうになる。表情を変えようとせず、ルーチェは口を開く。
「聞きたいことは二つ。一つはその本のタイトル。もう一つは誰から受け取ってくればいいのか」
「それを確認するということは、依頼を受けていただける、そう考えてよろしいですね?」
変わらぬ笑顔でたずねてきたポラーレ。その質問にルーチェは黙って頷いた。
「ありがとうございま——」
「あ、あの……」
ポラーレの言葉をさえぎった声が聞こえてきた。ベッドの頭側で小さく右手を上げたアナリズの姿があった。ルーチェは顔だけを向けてたずねる。
「どうした? 何か気になることでも?」
「え、えーっと、ルーチェさん。そもそもこの話って、僕、聞いてよかったんですか?」
「ポラーレ、どうなの?」
ルーチェはポラーレにたずねる。ポラーレは柔和な顔をしたまま、首を横に振った。
「問題ありません。今の状態のルーチェさんをサポートしてもらうために、アナリズさんにも同行してもらえばいいと思っていますので」
「だそうよ」
ポラーレがアナリズの方を向いて話した。ルーチェの言葉に、アナリズが一度頷いた。
「わかりました。でも、ルーチェさん。僕との約束は?」
「約束というのは? ルーチェさん?」
「私とアナリズ、それぞれが探している人を協力して探そうという話をしていた。私は姉さんを、アナリズはリィカトーレという人を」
ルーチェの説明を聞いたポラーレがかけていたメガネの真ん中を押し上げた。そして、手帳を開いて、目を落とした。
「……リィカトーレ、ですか。どこかで聞いた記憶がありますね……」
「そ、それはどこでですか?」
アナリズがポラーレに足音を立てて近づいた。その音を聞いたポラーレは、手帳から目を離した。イスに座っていたポラーレの目の前にはアナリズが立っていた。背の高いポラーレとアナリズの目の高さはほとんど同じだった。そのポラーレの肩につかみかかろうとするアナリズ。
「アナリズ! 落ち着いて」




