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つぎはぎ  作者: 妄想する紙片
2nd ストーリー
310/323

新たな依頼 3

「ルーチェさんにお願いしたいのは、本の受け取りになります。ただ、どこにでもある本というわけではないんです」


「どういうこと?」


 眉間にしわを寄せながら、ルーチェはたずねる。その様子を見ていたポラーレが小さく首を横に振った。


「簡単に言えば自費製作された本のようです。ですので、この世に一冊しかないという本になりますね」


「自費製作? この時代にそんなことをした人がいると?」


「ええ。珍しいことだというのはわかっています。紙の本はほとんど廃れているというのにも関わらずです。何らかの理由で残したかった、ということでしょう」


「それを探すポラーレ。あなたも似たようなもんよ」


「もともと、紙の本が好きなのでね……今回はこの世に一つしかないと聞きましたので」


 ポラーレは手の中にあった手帳を閉じてわずかにあげた。


「その本にはいったい何が書かれているの?」


「……わかりません。ですので、ぜひ読みたいと思っているのです」


 視線を少しだけあげ、ポラーレは手帳を胸に抱えながら静かに告げた。その瞳ははっきりと輝いていた。ルーチェの眉間のしわは伸びず、むしろ深くなりそうになる。表情を変えようとせず、ルーチェは口を開く。


「聞きたいことは二つ。一つはその本のタイトル。もう一つは誰から受け取ってくればいいのか」


「それを確認するということは、依頼を受けていただける、そう考えてよろしいですね?」


 変わらぬ笑顔でたずねてきたポラーレ。その質問にルーチェは黙って頷いた。


「ありがとうございま——」


「あ、あの……」


 ポラーレの言葉をさえぎった声が聞こえてきた。ベッドの頭側で小さく右手を上げたアナリズの姿があった。ルーチェは顔だけを向けてたずねる。


「どうした? 何か気になることでも?」


「え、えーっと、ルーチェさん。そもそもこの話って、僕、聞いてよかったんですか?」


「ポラーレ、どうなの?」


 ルーチェはポラーレにたずねる。ポラーレは柔和な顔をしたまま、首を横に振った。


「問題ありません。今の状態のルーチェさんをサポートしてもらうために、アナリズさんにも同行してもらえばいいと思っていますので」


「だそうよ」


 ポラーレがアナリズの方を向いて話した。ルーチェの言葉に、アナリズが一度頷いた。


「わかりました。でも、ルーチェさん。僕との約束は?」


「約束というのは? ルーチェさん?」


「私とアナリズ、それぞれが探している人を協力して探そうという話をしていた。私は姉さんを、アナリズはリィカトーレという人を」


 ルーチェの説明を聞いたポラーレがかけていたメガネの真ん中を押し上げた。そして、手帳を開いて、目を落とした。


「……リィカトーレ、ですか。どこかで聞いた記憶がありますね……」


「そ、それはどこでですか?」


 アナリズがポラーレに足音を立てて近づいた。その音を聞いたポラーレは、手帳から目を離した。イスに座っていたポラーレの目の前にはアナリズが立っていた。背の高いポラーレとアナリズの目の高さはほとんど同じだった。そのポラーレの肩につかみかかろうとするアナリズ。


「アナリズ! 落ち着いて」


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