新たな依頼 2
「ポラーレ。痛い」
「ぽ、ポラーレさん?」
アナリズがポラーレに近づきながら声を上げた。
「おや? そうでしたか。力を入れ過ぎましたね。申し訳ありません」
ポラーレはアナリズを無視して、ルーチェの手を放してから頭を下げた。すぐに顔を上げて、ポラーレは続けた。
「ですが、感覚や力が入っているようなので、安心ですね」
言って、ポラーレは座った姿勢を直した。背筋を伸ばし、胸を張った。柔和な表情は少しかげりを見せ、メガネの向こうの目がわずかに細くなった。
「今回の治療の代わりといっては何ですが……」
ルーチェは外からではわからないほど、小さな動きで唾を飲み込む。計ったかのようにポラーレが続けてきた。
「簡単なお仕事です。あるものを受け取ってきてほしいんです」
「えっ?」
ニヤついた顔でルーチェを見てきたポラーレ。口から出た言葉とともに、ルーチェは目を丸くしてポラーレを見る。ポラーレがどこからかクリーム色の手帳を取り出した。それを開きながら、話し始めたポラーレ。
「お願いできませんか? ルーチェさん?」
「……別にかまわないけど、それは持ってきてもらったり、運んでもらったりはできない? ポラーレが取りに行くとか?」
「ルーチェさんの言いたいことはわかります。確かに取りに行くのが一番なんですが、少々事情がありまして。受け取りに行くことができないんです。もちろん、相手に持ってきてもらうのも少々難しい理由がございまして。かといって、運んでもらうのも少々怖いものがございまして…………」
ポラーレは手の中にある手帳をパラパラとめくりながら、話し続けてきた。その手の動きが止まった。そこで口角をあげた表情でルーチェを見てきたポラーレ。
「ルーチェさんの調子さえ戻っているようであれば、ぜひお願いしたいと思いまして。信用できない人にお願いするよりも、やはり頼りになる人に……というところです。受け取りに行ってもらえませんか?」
イスに座った姿勢のまま、身を乗り出すようにして距離を詰めてきたポラーレ。ルーチェは手をベッドについて倒れないように身体を支えた。
「そ、それで? いったい何を取りに行ってくればいい?」
ルーチェの答えを聞いたポラーレの表情が一気に明るくなった。ポラーレはその表情のまま、元のイスに腰を下ろした。ルーチェはポラーレの動作に合わせて、小さく息を吐き出す。吐きながら手の位置を戻し、座り直す。
ポラーレはルーチェが姿勢を直し終えたところで口火を切った。




