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つぎはぎ  作者: 妄想する紙片
2nd ストーリー
307/323

動けるようになって 3

 ひと際声を大きくして、オリチェがルーチェの肩をつかんできた。その力にルーチェは小さく顔をしかめる。


「オリチェ。ルーチェさんが起きてこなかったらどうしようってずっと不安でした! 今は座ってられるようになったから良かったけど、またおんなじようなことになったら、オリチェは……オリチェは……」


 徐々に小さくなっていったオリチェの声。オリチェの両手がルーチェの身体に回された。そして、ギュッと抱きしめられた。オリチェの身体からルーチェへと温もりが伝わってきていた。ルーチェは両手が塞がってしまっていて、オリチェに何も返すことができないでいる。ただ、じっとオリチェの背中を見続けている。


 その背中が小刻みに震え始めた。小さな嗚咽が耳に届く。


「……オリチェ」


「うっ……ぐすっ……」


 アナリズが一歩、オリチェへと近づいてきたがルーチェは首を横に振ってそれを制する。アナリズは音を立てることなく、静かに足を引っ込めた。


「ご、ごめん、なさい……」


 オリチェが身体を離しながら、少し震える声で謝ってきた。ルーチェは自由になった左手でオリチェの頭に触れる。オリチェのツインテールを崩さないようにそっと流れに沿って頭を撫でる。


「心配してくれたんだ……嬉しいよ。ありがとう」


 ささやくようにしてオリチェに話しかけるルーチェ。


「ごめんなさい……ごめん、なさい……」


 何度も謝り続けてきたオリチェ。ルーチェはその度に、うん、うんと声をかけ続ける。


 やがて、嗚咽は小さくなり、おさまっていった。オリチェはルーチェから離れてイスへと戻っていった。


「少し……落ち着いた?」


 オリチェの様子を見ながら、静かにたずねるルーチェ。それからルーチェはオリチェに自分の使っていたコップを渡す。


「私が使ったもので悪いけど、お水でも飲んで落ち着いて」


 オリチェは何も言わずにコップを受け取った。自らの手でデキャンタから水を注ぎ、そのまま半分ほど飲む。ふぅと息をついてからルーチェへと視線を戻したオリチェ。


「はい……ありがとうございます。オリチェ、今新しいコップ持ってきます」


 そう言って立ち上がろうとしたオリチェ。それを見たルーチェは、いいよ、と声をかける。


「大丈夫だから」


「ぼ、僕が持ってきましょうか?」


 アナリズがおずおずと声をかけてきた。ルーチェは首を横に振る。


「あとでいい。それより、オリチェに話をして少し整理できた気がする。これからどうしたらいいのか……それはわからないけどね」


 ルーチェは言って、右腕で左腕を支えるようにして腕を組む。視線はアナリズへと向けたまま。


「ぼ、僕が探しているリィカトーレの行方を知っているはずなのがピディーグ博士。その博士を連れて行ったのが、黒い獣とマレディと呼ぶのが正しい女性。そういうことですよね?」


 アナリズが状況を簡単にまとめて話した。


「それで間違いない。姉さんを追うにしても、リィカトーレさんを追うにしても、引っかかってくるのはあのマレディという女の人。今のところ、どっちの線の上にもいるのはこの人だけ」


「でも、そのマレディって人はいったいどこにいるんですか? オリチェ。聞いている限り手がかりは何にもない様に思うんですけど……」


「そうね……完全に手詰まりか。闇雲に探すわけにもいかない……」


 三人は押し黙った。


 誰も何の言葉も見つけられなかった。


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