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つぎはぎ  作者: 妄想する紙片
2nd ストーリー
306/322

動けるようになって 2

「る、ルーチェさん?」


 オリチェが音を聞いて声をかけてきた。ルーチェはそれを無視して、コップ一杯の水を一気に飲み干す。


「ふぅ。オリチェ」


「は、はい」


「姉さんは見つかってない」


 息を整えたルーチェが、ゆっくりと告げる。


「はいっ?」


 オリチェの口から何かが抜けていったような声が出てきた。メガネの向こうで見開かれた目はルーチェをじっと見てきていた。ルーチェは黙ってデキャンタに手を伸ばし、水をコップに注ぐ。


 少しだけ水を含むルーチェ。ゆっくりと飲み下してから口を開く。


 ルーチェはオリチェにマレディのことでわかっていることを話す。


「……えっと。オリチェ、こんがらがってきたんですけど……要はその人はルーチェさんのお姉さんじゃないってことですか?」


 オリチェがイスに腰を下ろし小首を傾げながら、ルーチェにたずねていた。ルーチェの方は目線を右下に向けたまま、口を開く。


「私とアナリズがファーマエンダの研究所で会った()()()は姿が違っていた。でもそれよりも、気になったのが自分の名前に()をつけていたこと。わざわざ自分の名前を名乗るのに、()なんてつける?」


「そんな人……いませんよ。変な人って言われます」


「……そう。だけど、もう一つ気になったのが……」


「…………ノート、ですよね?」


 イスをオリチェに譲ったアナリズは立ったまま話を聞いていた。そのアナリズが口を開いた。ルーチェはアナリズの方を一瞥して首肯する。視線はオリチェに戻している。


「そう、ね。あの女、多分資料の女だとしたら、マレディなんだけど。彼女、会話に詰まった時にノートを取りだしていた」


 ルーチェがコップを持ったまま、手で大きさをオリチェに示す。手の平よりも少し大きな形。


「中身を見て、それから何かを書き込んでいた。それが何かはわからない。ただ、それが記憶に関してのことだとしたら——」


「あのマレディという人が、実はリナシッタさんで記憶を失っているかもしれない……そういうことですか?」


 アナリズがルーチェの後を継いで、考えを伝えた。それを聞いていたルーチェは再び頷く。


「あくまで可能性……だけどね」


「る、ルーチェさんはどうするんですか!? オリチェだったら、その人、追いかけますけど!」


 オリチェがイスから立ち上がって問い質してきた。その姿を見上げているルーチェは、わずかに身体を後ろにのけ反らせながら、静かに答える。


「追うわ。どっちにしても手がかりは彼女しかいないから」


「そう、ですよね。オリチェに止める権利なんかありません。でも!」


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