動けるようになって
さらに一日が経って、ルーチェは身体を動かせるようになる。痛みはあるものの、ベッドから動くことができるようになった。
ベッドに腰かけて水を飲んでいるルーチェ。デキャンタの中身はすでに空になっていた。その様子をアナリズがイスに座って見ていた。
「あれから調べてみましたが、マレディという人物がどこにいるかはわかりませんでした。もしかしたら、アバラックバーイアを出ているのかもしれません」
「黒い獣の方は?」
「そちらも同じです。あれだけ目立つのに見つからないのは不自然ですが……」
言ってアナリズは立ち上がって、自分の腕を目いっぱい上に伸ばした。
「あの獣は今の僕よりもさらに大きかったですから……」
「そうね」
見上げながらつぶやくルーチェ。
「何の話をしてるんですか?」
ドアが開く音と声が飛び込んできた。見ると、オリチェが新しいデキャンタを持って立っていた。デキャンタの中には水が入っていた。そのデキャンタを持ったオリチェは、慣れた足取りでルーチェの元へとやってきた。
テーブルのデキャンタと持ってきたものを入れ替えた。
「ありがとう、オリチェ」
「いえ。それで? 何やってんの?」
腕を伸ばしたまま立っていたアナリズに向かって冷たく言い放ったオリチェ。その目は半眼になっていた。アナリズはそれを見下ろしながら、固まっていた。
「そんなことしたって、身長が伸びることなんてないわよ」
「そ、そんなつもりはないんですけど……」
「どうだか……そういえばルーチェさん」
オリチェが小さくため息をもらしながら、ルーチェの方へと視線を戻す。
「何?」
「お姉さん、見つかったんですよね?」
「…………」
オリチェの言葉にルーチェは押し黙る。手に持ったコップに視線を落とし、コップを両手でゆっくりと回し始める。オリチェの隣にいたアナリズも静かに両腕を下ろし、二人のやり取りを黙って見ていた。
「えっ? あの……」
二人の変化を見たオリチェがルーチェとアナリズを交互に見た。しかし、二人ともオリチェとは視線を合わせようとはしなかった。
オリチェがアナリズに近づき、部屋の隅へと引っ張っていった。
「ちょっと! どうなってるのよ?」
「ど、どうなってるっていわれても……」
「オリチェ、明らかに空気悪くしちゃったじゃない!」
「いや、まぁ……」
部屋の隅で言い合っている二人の声を聞いているルーチェ。テーブルに手を伸ばす。わずかに顔をしかめるが、デキャンタをつかんでコップに水を注ぐ。




