どこへ向かうのか 2
ガタリとイスの動いた音がした。音の方へと視線を向けるとアナリズが座り込んでいた。左目が確かにルーチェをじっと見ていた。
「というと?」
ルーチェは天井に視線を戻す。
「私たちの前で爪の男の命を奪った、黒い髪の女。ファーマエンダの資料には、マレディ、と書かれていた」
「確か、ルーチェさんが、姉さん、と呼んだ人、でしたよね」
「ええ。あの人は姉さんと同じ顔をしていた。だから、あの人を追えば、姉さんをみつけられるかもしれない。もしかしたら、何かの理由で姉さんがあのマレディという女になっているのかも。だから、私はあの女を追う」
一気に話したルーチェは大きく息をついた。仰向けのまま話し続けていたため、息が浅くなっていた。何度か、呼吸をし落ち着きを取り戻すルーチェ。目線をアナリズへと向ける。アナリズの左目と目が合う。鋭くなっていたその目に射抜かれたルーチェ。
ルーチェは視線を窓の外へ向ける。強い光が目に飛び込んできた。反射的に目を細めるルーチェ。
「必ずつながっている、と?」
アナリズの言葉に、ルーチェは目を細めたまま、短く息を吐き出す。
「そんなことわかるわけない。でも、追ってみないとわからない。追った先に姉さんがいるかもしれないし、いないかもしれない……」
「でも、お姉さんを捜す、と」
ルーチェが右手に力を込める。血色の悪かった手に赤みがさしていった。
「ずっと探してた、やっと見つかった手がかりなんだ! たとえ、違っていても私は追う!」
握りこまれた右手から小さな音がしてきた。
「る、ルーチェさん。そ、それ以上は……」
覆いかぶさるようにしてアナリズが手を伸ばした。その手はルーチェの右手に重なった。しかし、ルーチェはすぐに手を振り払うが、力が入らずベッドに落ちていった。
「ぐっ」
「ル、ルーチェさん!?」
苦悶の声を上げたルーチェの顔をのぞき込んできたアナリズ。ルーチェは自分の視界に入り込んできたアナリズをにらみ返す。
「落ち着いてください! 身体に障ります!」
「誰に何と言われようと、私は姉さんを探す……」
「わかってます! 僕だって同じです! リィカトーレを見つけたいんです! だから——」
そこまで言って、アナリズもまたルーチェの目をまっすぐ見据えてきた。左目だけでにらむ目は、ルーチェの右目をじっと捉えていた。
「協力しませんか? ルーチェさんのお姉さんとリィカトーレを見つけるのを」




