目が覚めて 7
「リィカトーレ?」
「はい」
「そのリィカトーレさんを捜すために、ピディーグ博士が必要、と?」
「そうです。おそらく、行方を知っているはずなので……」
そこまで話して、アナリズは窓へと視線を戻した。
ルーチェはその背中をじっと見る。アナリズは背を向けたまま動くそぶりを見せなかった。
「アナリズ。どうして、リィカトーレさんを捜して……」
そこでルーチェは話すのを止める。そして、自らの右腕をじっと見続けている。血色の悪い右腕。それでも動かすことができるそれをただただ見ている。
「リィカトーレ……どこかで見た記憶が……」
口の中だけで反響する程度の小さな声。しかし、その声はアナリズの耳にも届いていた。
次の瞬間、ルーチェのベッドの横まで移動したアナリズ。その両手でルーチェの肩をつかむ。掛け布団越しでも肩の位置がはっきりわかるほどの力でつかんでいた。
「ど、どこで!? どこで見たんですか!?」
あまりにも大きな声が部屋の中に響き渡った。耳を塞ぐこともできないルーチェはその大きな声をまともに受け止める。反射的に顔をしかめるルーチェ。が、アナリズは肩をつかむ手の力を緩めることはなかった。ルーチェの眉に強くしわが寄る。
「ぐっ」
「いったい、どこで!」
アナリズにはルーチェの悲鳴が届いていなかった。つかんだ肩を思い切り揺さぶりだした。掛け布団がよれて、はだけそうになった。
「ぐっ、や、やめろ! アナリズ!」
かろうじて動いた右腕でアナリズを突き飛ばす。
「ぐぁっ」
アナリズの悲鳴が聞こえ、床に倒れた音がした。無理矢理動かした右腕は、すぐにベッドの上に下ろす。小刻みに震えていたが、ルーチェはなんとか動かして、乱れた掛け布団を直す。直した後、力の抜けた右腕はベッドの上に投げ出された。
腕も動かせなくなったルーチェがアナリズを見ると、床に座り込んだままうなだれていた。肩を大きく揺らし、呼吸をする音だけが響いていた。その様子を黙って見続けるルーチェ。
「…………」
やがて、一度だけため息をつくように大きく深呼吸をしたアナリズ。それから、顔をあげた。
「す、すいません……」
「まったく、何を考えているの。さっきまで寝ていた人間に向かってすることか?」
目を細め、声を低くしながら話すルーチェ。視線で射抜かれていることに気づいていたアナリズが小さく頭を下げた。
「すいません」
「さっきは何とか体を動かせたが……くっ」
ルーチェの顔が歪む。身体を動かそうとするが、できない。アナリズの方を見続けることができず、顔を背ける。
アナリズがベッドに近づいてきた。




