目が覚めて 5
「すいませんでした。踏み込んだことをきいてしまって」
「……わかってくれたならいい。答えられないことだってある」
「そう、ですね」
アナリズは顔を下げたまま、話を続けた。一つだけ、息を吐き出してから顔を上げた。それを見たルーチェは続きを促す。
「治療の後、ルーチェさんは熱が出ました。かなりの高熱で昨日も多少解熱しただけで、高いままでした。それでも昨日の夜には下がっていました」
「アナリズ……カーテンを開けて」
視線をカーテンへと向けて、ルーチェはアナリズに頼む。イスがガタンと鳴った。アナリズの足音が部屋の中に響いた。カーテンをつかみ、静かに動かした。
「うっ」
ルーチェは強い光に目を細める。飛び込んできた陽光が部屋の中を照らした。
「まぶしかったですか?」
「構わない。私が頼んだんだから。開けたままにして」
言って、ルーチェは気づかれないように息を吐き出す。治療を施された右手を握りこむ。わずかに震えながらも指が動く。
「アナリズ。先に礼を言うべきだったな。ありがとう」
「い、いきなりどうしたんですか?」
「いや……助けてもらったのに、失礼だなと思ったからね」
アナリズの左目が大きく開いた後、頬がわずかに緩んでいた。ルーチェもつられて顔を綻ばせる。
「い、いえ……」
顔を赤くしながら、アナリズが窓の方へと視線を向けた。その耳も赤くなっていたのをルーチェは見つける。しばらく、窓の外を見ていたアナリズが咳ばらいを一つして、ルーチェへと振り返った。その顔には赤みが消えていた。左目が真剣な表情に戻っていた。
「ルーチェさんが眠っていた間にあったことを伝えても?」
アナリズがルーチェを見ながらたずねてきた。それを聞いたルーチェは黙って首を縦に振った。アナリズもそれに応えるように首肯してから口を開いた。
「まずは、警察からの事情聴取を受けました。僕、マスター、ポラーレさんです。ルーチェさんは眠っていたので、良いということになりましたが……。目が覚めた以上、話をきかれると思います」
「でしょうね。きかない理由は何もないから。それで? 具体的にどんなことを?」
ルーチェは震える右手を持ち上げて、話を促す。アナリズもその手に視線を向け、それからルーチェの方へと視線を戻した。
「ファーマエンダの研究所に侵入した理由、警備課を倒した理由と内部で見つかった遺体について、です」
ルーチェの眉毛がわずかに動く。
「遺体?」
「はい。一つはルーチェさんもご存じの、ペルデさんでしたっけ。彼の遺体。もう一つはルーチェさんが戦っていた爪を伸ばした男」
「…………」
視線をアナリズから外し、自分の右手の方へと向けるルーチェ。握りこんでいた手をわずかに緩め、再び握りこむ。少しだけ血色が変わった。




