目が覚めて 4
はっ、という声とともにルーチェのことを見下ろしてきたアナリズ。左目が大きく見開かれていた。ルーチェは眉間にしわを寄せながら、さらに続ける。
「ケガの状態を確認するぐらい問題はないだろう?」
「……そ、それはそうですが……でも……」
「でも、じゃないだろう? 私とアナリズだけだったらどうするつもりだ? その時も離れるのか?」
「そ、そんな状況だったら、離れませんよ」
「だったら、今回も同じだ! どうして離れた?」
「マスターやオリチェさんに怒られますよ! じょ、女性の身体をみるのかって!」
今度はルーチェが、あっ、と小さな声を出した後に押し黙る。動かしていたはずの右手の指も動きを止める。アナリズは視線をルーチェから外していた。ルーチェはぎこちなく動く右腕でわずかに掛け布団を持ち上げる。それから掛け布団の中をのぞき込む。ルーチェの目には自分の素肌が入ってくる。
「い、言っておきますが、変なことはしていませんよ。マスターやオリチェさんに横にいてもいいけど、それ以外は何もするなと言われていましたので」
「そ、そうだったのか……ごめん」
掛け布団を整えながら、ルーチェは小さな声で伝える。アナリズも小さく、いえ、とだけ答え、イスの方へと戻っていった。
その様子を見届けてから、ルーチェは口を開く。
「そのアルテファットの技師は医者だったのか?」
「アルテファットは神経と接続しますから。人体の構造を理解できていないとできませんから。当然、治療もできます。さっきも伝えましたが、内出血がひどかったので、血管の再建術も行ったみたいです」
「…………」
「輸血も検討されたみたいですが、強引に口から水を流し込んで光を当てたと言っていました。それが治療初日です。僕はその日、ルーチェさんの部屋に入っていません。すごく強引なことをしていたと聞きましたし」
「た、確かに」
アナリズがルーチェを見ながら首を傾げる。
「ところでルーチェさん」
「何?」
「ど、どうしてマスターやオリチェさんはさっき伝えた突拍子もない方法を許したんですか? 本当だったら入院してするような治療だと思うんですけど」
「……答えられない」
ルーチェはアナリズの視線を受け止めながら、言い切るように答える。その視線を受け止めることができなかったアナリズは黙って顔を下げた。
沈黙が下りた。
ルーチェは固まってしまったアナリズをただじっと見ている。やがて、ゆっくりと顔をあげたアナリズ。ルーチェと視線がぶつかった時、アナリズはすぐに頭を下げた。




