目が覚めて
天井から一つの照明が吊り下げられていた。そこからオレンジ色の光が降り注いでいた。
それが最初にルーチェの目に入る。
「痛っ……」
ルーチェは身体を起こそうとわずかに浮かせようとする。しかし、それは続かなかった。小さな悲鳴とともにルーチェは全身を何かに預けたままにする。
視線だけを動かす。
「……部屋?」
ルーチェは疑問をそのまま口にする。かろうじて動かせた頭を動かす。視線の先にあったチェスト。そこにはルーチェがいつも身に着けているレザージャケットとナイフホルスターが置かれていた。それからこの部屋の入口と洗面所へとつながるドアが見える。
そのドアが開いた。
ドアをくぐって一人の女性が入ってきた。メガネとツインテールをしていたその女性は、ドアを閉めてからルーチェの方へと視線を向けた。
「ルーチェさん!?」
叫びとともに駆け寄ってきた女性。近くに立って、ルーチェをのぞき込んできた。
「大丈夫ですか? 痛いところとかないですか?」
ツインテールが垂れてきた。顔に影が落ちた。ただ、その瞳は少しうるんでいた。
「わからない……いったい、何が? 痛っ」
ルーチェは女性に近かった左手を動かそうとする。しかし、先ほどと同じように痛みが走り、動かすことができなかった。
「動かないで。ルーチェさん。ケガしてたんだから」
女性がルーチェに向かって手を向けてきた。そして、ツインテールが揺れていた。ルーチェはその先端を見て、わずかに顔をしかめる。女性はルーチェの表情を見て、身体を離した。
「ご、ごめんなさい。オリチェの髪、邪魔ですね」
オリチェと名乗った女性が、ルーチェの視界から離れていった。ルーチェがオリチェの動きを視線で追うと、オリチェは左手で何かを叩いた。
「えっ? あっ! ルーチェさん! 大丈夫ですか?」
ガタンという音とともに、オリチェの横、ルーチェの足元に青年が現われた。右目に包帯を、首に灰色のマフラーを巻いていた。その青年がオリチェを押しのけて、ルーチェの視界に入り込んできた。床に硬いものがぶつかったような音がした。
「ちょっと!」
「す、すいません、オリチェさん」
青年の顔が動き、右目の包帯がわずかな時間見えなくなる。しかし、それもすぐに戻り、青年は再びルーチェを見てきた。
「お、起きたんですね。ルーチェさん。良かったです」
少しどもりながら、話しかけてきた青年。口を動かしていくごとに徐々に固かった表情が柔らかなものに変わっていった。ルーチェはその変化をぼんやりと見ている。
「アナリズだって、今までそこで寝てたでしょ!」
押しのけられていたオリチェが、アナリズと呼んだ青年に向かって大きな声をあげていた。今にも胸倉をつかんでしまいそうな勢いでアナリズを見ていた。アナリズの方は反対に気圧されたのか、一歩身体を引いていた。
「二人とも、落ち着いて」
ルーチェは小さな声で何とか二人に伝える。二人がルーチェの方を見た後に、顔を見合わせて頭を下げてきた。
「すいません」
「ごめんなさい」
ルーチェの耳にそれぞれの言葉が届く。小さくうなづいたルーチェは、身体を頭だけを動かし、口を開く。




