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魔女の戯れ  作者: 42
ファンタスティックサーカス
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8/55

【3】

 明朝。

 空は雲一つ無い晴天。

 心地よい風が吹き、黒と純白の髪を揺らす。

「——という事で、本番は明日。さぁ、特訓するんだわ」

 元気いっぱいに、ルナは言い放つ。

 彼女の目の前に立つ二つの獣は、この上なく嫌そうな顔で互いを見合わす。

「あなた達が頑張らないと、わたくし達。もう近場の動物園を襲撃しないといけなくなってしまうのよ」

 ローズは如何にも困っている。と言った表情を浮かべる。

「……我々に、見せ物になれと——おっしゃるのですね」

 純白の髪をもつ青年は、物悲しそうな視線をローズへ向ける。

「仕方ないじゃない。わたくし達だって、こんな事になるなんて思ってもいなかったんですから。これも仕事なの。それに、いつもその姿なんですから。たまにはあなたのその美しい毛並みを見せびらかさなくちゃ。わたくしの半身が、どれほどの美か——。希少な純白の狼。あなたが姿を見せただけで、きっと大盛り上がりよ。ね、一緒に——拍手喝采に包まれましょう」

「はい! 喜んで!」

「うっわ。ちょろいんだわ笑」

 元気っぱいに尻尾を振る姿が安易に想像出来る返事に、ルナは笑いを隠せない。

「あ、あの——ルナ様。ぼくは……」

「あークロたんは、いつもの感じでいいっしょ。魔女の相棒といえば黒猫なんだわ」

「でも——猫は猛獣ではありません」

「そーなんだけど。あっちがセクシー担当だからこっちはキュートでも問題ないっしょ。猫ってさ、芸覚えないじゃん。でも、芸のできる猫って、めちゃくちゃ可愛いじゃん。いつにも増して可愛いじゃん。あざとくいけば、皆んな虜になるって。大丈夫。猛獣なんて大抵猫科なんだから。鳥からすれば猫だって猛獣だって。って事で。ほら、早く変化変化」

 促されるまま形を変える。

 小さく。小さく。

 やがて、足元には一匹の黒猫。艶やかな漆黒の毛並みに、スラリとした尾。

 金色の瞳は、ルナを見上げる。

「ぎゃークロたん可愛すぎるんだわ」

 ルナは黒猫を抱き上げ、その腹に顔を埋める。

「る、ルナ様ーくすぐったいですよー」

「スーハースーハー。猫好きにはたまらん」

 猫は身を捩る。

「や、やめてくださいー」

「何をしているんだか。ルナ。ほら、始めるわよ」

 ローズの言葉で猫吸いをやめたルナの前に、大きな真っ白の狼が現れた。四メートルにもなる狼の姿は、猛獣に相応しい体躯をしているが、その瞳は優しい。

 空色の瞳は穏やかな視線で黒猫を見つめる。

「相変わらずでっかいんだわ。フランネル。こんなでっかい狼現れたら、びびって逃げるんだわ。合格」

「なーにが合格よ。遊んでないで、練習するわよ」

 二匹の獣と二人の魔女は、サーカス本番に向けて特訓を開始する。

 

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