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魔女の戯れ  作者: 42
狂騒曲ダリア
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53/55

【8】

 翌朝。

 厳重に防壁を張り、扉に施錠を行い尋問は始まった。この部屋には、局長とペリカ。そしてローズとルナの四人が男を取り囲むように立つ。その中心に、椅子に座り後ろに手を回し拘束される件の首謀者。

 洗いざらい全部吐くんだわ。

 ルナの言葉に、男は従順だった。云く、自分を負かした相手の言う事を聞くのは当然。などと平然と言うので、魔女達の気は逆立った。

 お手伝いさん拉致事件の真相を、男は語る。

 事は、遥か遠い昔。

 竜の魔女の遺言から始まる。彼女の遺した言葉。我が遺体より衣を創りなさい。その衣は魔力を消し去る事が出来る。他者と接する時に、きっと役に立つだろう。とあった。

 その衣を創ったものの、今の今まで使う者はいなかったそうだ。誰も、他の種族と関わりを持とうとしなかったからだ。

 竜の魔女の子孫だと分かると、態度は急変。直ぐに除け者にされてきた。誰もが疎まれる。皆辟易していた。だから、閉じこもって、ひっそりと暮らしてきた。

 だが、ある日。

 そんな、生活に嫌気がさした奴がいた。そいつは、人間の世界におもむき、そして知った。争いがあると。そして、思いついてしまった。人間も、他の妖精もめちゃくちゃに出来る方法を。

「それからは、ご推察の通りって事だ」

「人間を招き入れたのもお前か?」

「まさか。俺の爺さんだ。酔った勢いで、外に出てってやつよ」

「……とんでもない爺さんの親族だったのか、おまえ。うーん……これは、もう処す方向でいい気がするんだわ……」

「何を言う。処すも何も、爺さんはもうこの世には居ないぞ」

「——まじか」

 おまえの事なんだわ。と怒鳴りつけたい気持ちを、必死で抑える。

「それで、ダリアは? どうやって手に入れた」

「ダリア? あれはダリアじゃない。ブラックダリアだ」

「ブラックダリア?」

 初見の言葉に一斉に驚く。

「あぁ。竜の池に自生する花だ。エルフの池に似たような花があるなと見に行った事はあったがな。ブラックダリアは、言わば再編薬。アル中の爺さんを更生させるための薬だったが、不要になってしまってな。今回、使わせてもらった。例えば、爺さんのアル中部分だけを治したいとする。そこで、このブラックダリアを服用させ、一度爺さんの人格を消す。その間は、生きた屍のようになるがな。暫くすると、目を覚ます。この目を覚ました状態の時に、消したい人格を消す。足したいところがあれば足す。人間に使うには初めてだったが、思っていたよりも時間がかかった。だが、完璧なお手伝いさんにする為には、必要だった。時間がかかりすぎた所為で、こうして捕まってしまったがな」

 再編。とは言うが、奇跡的に目を覚ました被害者達に変化は見られなかった。記憶も人体も正常だ。不思議な事に。

「でもどうやって再編? するのかしら」

 ローズが尋ねる。

「決まっている。そう、願うだけだ」

「願うだけ?」

「そうだ。酒をやめろとか、料理上手くなれとか、まぁそんな感じで良い。吹き込む感じでな」

 そりゃ変わらない筈だわ。ローズは白目を剥きそうになる。

「じゃぁ、盗人になれって願えば、そうなるわけだ」

「そうだな。願いは具体的であればある程効果が分かりやすい」

 使い方次第では、良くも悪くもなる薬なのだろう。不幸中の幸いか。男は初めから、職種に特化した人間を選んでいた。だから、ブラックダリアの再編効果が出ない。ただただ無駄に事が大きくなっただけの顛末に、怒りというよりも呆れの感情が大きい。

「ねぇ——このブラックダリアって薬、こいつで試してみたいんだわ。まともになるかもしれない……」

「あぁ、駄目ですよ——。証拠物なんですから、いけません」

「ちぇっ」ルナは口を尖らせた。


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