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魔女の戯れ  作者: 42
深夜十二時の夢
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5/55

【5】

 概ね、予想通り。

 一夜の夢は、この上なく上手くいった。ただ予想外な事といえば、思いのほか王子がエルにゾッコンラブになってしまった事だ。

 片方だけの硝子の靴を抱え、この靴を履ける者と結婚する。なーんて言い出したものだから、王宮は壮絶となった。

 あまりに大きな硝子の靴は、オブジェです。この様なサイズ、女性用ではありません。オブジェです。と言い宥められたが、熱意に押され、結局の所花嫁探しとなった。

 その頃の姉二人はというと、ローズの話術により妹耐性を得るべく修行をし、今では少し顔を合わせる機会が増えていた。

 何より、硝子の靴が妹の足にジャストフィットした時は、何故かこの上なく喜んでいた。それも、ローズの入れ知恵。

 あの二人から産まれる子は——さぞ美青年でしょうね。羨ましいわ。だって、叔母さんになれるのでしょう? 小さい頃から大きくなるまで美青年の成長を見守れるなんて、なんて役得。しかも、見てよ。あの美青年&美青年。最&高。

 とまぁ、薔薇? の布教もあって、新たな扉に片足突っ込んだ姉二人であった。

 心配だよ——この先が。こればっかりは、ローズの責任。二人の結婚相手まで見つけてあげるのが筋って事で。

 結婚式は、まぁ見に行ったよ。

 実質、あたし達はキューピットだからね。

 ローズなんて、花嫁が花婿に見える魔法使って、ブラボーって言いながらずっと拍手してた。まじ完全に自分の趣味に走ってたんだわ。

 とまぁ、なんとか全部丸く納まった。

 対価も、当初の金額プラス王子様からも、素敵な出会いをありがとうって事で、そりゃあもう。ね。頂けるものは頂いた。

 世の中お金がないと、なーんにも立ち行かないからね。

 夢も希望もない話なんだわ。

 そして、あの硝子の靴も片方くれた。まぁ、サイズなんか当然合わない。だから、その飾ってあるよ。ちゃんとね。


 ルナは台帳に記す。

 魔法なんて、ちょっとしたきっかけに過ぎない。少しだけ、歯車を回すのに必要な、一つの螺。

 螺一つ。それだけで、世界はゆっくりと動き出す。

 追記

 でも、回しすぎには要注意。

「っと」

 そっとペンを置く。

「ご苦労さまでした。ルナ様」

「クロたん。紅茶あんがと」

「ミルクと砂糖マシマシです」

「流石。気が利くなークロたんは」

 少年は優しい笑みを浮かべる。

 

 静かな夜。

 魔女の城の一室。

 蜂蜜色の瞳が二対。ゆらりと煌めく——。

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