【4】
「それじゃ、わたくし達も見守りに行きましょうか」
「いやー楽しみ。癖暴露大会——っと、危ない。夢の世界へ、レッツゴーなんだわ」
二人の魔女は、箒に跨り夜を駆ける。
魔法にかけられた舞踏会。
人々は、夢を見る。
遅れて現れた、魔法を纏う女性。
人々には、こう映る。
理想の異性に。
己の理想とするが現れた時、フロアは夢の世界へと変わる。
誰もがその姿に目を心を奪われる。
それは、王子様とて例外ではない。
「ど、ど、どストライク」
王子は吸い寄せられるように、ダンスを申し込む。
——よっしゃ! 決まったー!
フロアの端で、ガッツポーズを決めるルナ。
——やったわね。
——いやー。良かった良かった。でもさ、でもさ、ちょっとあれ、あの、エルの姿、変わってなくない?
小声で会話を続ける。
——そんな事って……あれ、ほ、ほんとだー。
——なんだよ、その棒読み。って事は、王子の好みは、普段のエルそのもの……。え、え? そんな事って、ある? そんな、これ、あれ? って事は魔法の意味ないんだわ。魔法の無駄使いだったんだわー。
——無駄使いなんて言わないで! しっかり周りには効いてるんだから。ほら、あの人なんかグラマラスバディの女性に見えるもの。それに、姉達はと——あら? こっちも変わってないわね……?
——マジか! あ、ほんとだ。えっ。そんな事って——って事は、あの姉達も妹がどストライクって事? いや、よく見たら顔だけエルで、格好は男性だな……ん? ヤバ……なんか混乱してきたんだわ。
——はっ! わたくし、分かってしまいましたわ。
——何が、わかったんだわさ。
——とどのつまり、面食いって事よ。顔が綺麗な男性が好みと、言う事よ。だって、エルは顔良しの骨格まで男性寄り。再婚相手が好みの顔引っさげて現れて、一緒に住むとかもう! だ・か・ら。極力顔を合わせないようにしてたのよ。外に出るなって事も、そーゆー事。町の娘達を誘惑しない為よ。
——誘惑って、エルは女の子なんだから、そんな事しないって。
——馬鹿!
——な、怒るポイントなくない?
——もう、馬鹿よ! 男装女子という新たな扉を開いて、歪んだ癖を爆誕させない為って事!
——あ〜。なるほど……。なるほど?
——彼女自身が、それを自覚していないのが危ないのよね。見なさいよ、姉達の理想を。あんな男装されたら、世の女性の目はハートマークよ。普段は、イケメンが女装してる感じだけど。それはそれで——まぁ、危ないのだけれど。とにかく。これはこれで一件落着じゃない。王子様とエルが結ばれれば、姉達もイケメン二人に……ズキューン!
話の途中で、ローズは急にしゃがみ込む。
あー……まずいですわ。ええ。ええ非常にまずいですわ。何がまずいって、これぞ……わわ、わ、わたくしの理想のシチュエーション! 理想の美青年&美青年(男装だけど)が、だ、だだダンスをしている! あわ、あわわわ
「——あの、だ、大丈夫ですか?」
ローズは声をかけられ、顔を上げる。
姉その一!
「これ、良かったら使って下さい」
「あ、ありがとうございます」
ハンカチを手渡される。
「ご気分でも?」
「い、いえ。ただの美青年過剰摂取による発作——あ、間違えました。ただのイケメンによる夢の共演——ではなく」
「おーい。イケメンから離れろー」
「王子様。素敵ですもの。無理もありませんわ。それに、あのお方——とても……私達の妹に良く似ているわ」
「妹?」
「あ、ええ。妹は、その、なんていうか——間違って女性に生まれてきたんです」
「はい?」
「顔も声も身体つきも男性そのものなのにっ。どうして——」
ルナとローズは顔を見合わせる。
「初めての方にこんなお話、ごめんなさい。どうか、気になさらず。ハンカチは差し上げます。お大事になさって下さい」
「あっ。ちょっ、ちょっと待て!」
「はい?」
「お礼を、させて下さい。この、ハンカチの。お話——聞かせて下さいな」




