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魔女の戯れ  作者: 42
深夜十二時の夢
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4/55

【4】

「それじゃ、わたくし達も見守りに行きましょうか」

「いやー楽しみ。癖暴露大会——っと、危ない。夢の世界へ、レッツゴーなんだわ」

 二人の魔女は、箒に跨り夜を駆ける。


 魔法にかけられた舞踏会。

 人々は、夢を見る。

 遅れて現れた、魔法を纏う女性。

 人々には、こう映る。

 理想の異性に。

 己の理想とするが現れた時、フロアは夢の世界へと変わる。

 誰もがその姿に目を心を奪われる。

 それは、王子様とて例外ではない。

「ど、ど、どストライク」

 王子は吸い寄せられるように、ダンスを申し込む。

 ——よっしゃ! 決まったー!

 フロアの端で、ガッツポーズを決めるルナ。

 ——やったわね。

 ——いやー。良かった良かった。でもさ、でもさ、ちょっとあれ、あの、エルの姿、変わってなくない?

 小声で会話を続ける。

 ——そんな事って……あれ、ほ、ほんとだー。

 ——なんだよ、その棒読み。って事は、王子の好みは、普段のエルそのもの……。え、え? そんな事って、ある? そんな、これ、あれ? って事は魔法の意味ないんだわ。魔法の無駄使いだったんだわー。

 ——無駄使いなんて言わないで! しっかり周りには効いてるんだから。ほら、あの人なんかグラマラスバディの女性に見えるもの。それに、姉達はと——あら? こっちも変わってないわね……?

 ——マジか! あ、ほんとだ。えっ。そんな事って——って事は、あの姉達も妹がどストライクって事? いや、よく見たら顔だけエルで、格好は男性だな……ん? ヤバ……なんか混乱してきたんだわ。

 ——はっ! わたくし、分かってしまいましたわ。

 ——何が、わかったんだわさ。

 ——とどのつまり、面食いって事よ。顔が綺麗な男性が好みと、言う事よ。だって、エルは顔良しの骨格まで男性寄り。再婚相手が好みの顔引っさげて現れて、一緒に住むとかもう! だ・か・ら。極力顔を合わせないようにしてたのよ。外に出るなって事も、そーゆー事。町の娘達を誘惑しない為よ。

 ——誘惑って、エルは女の子なんだから、そんな事しないって。

 ——馬鹿!

 ——な、怒るポイントなくない?

 ——もう、馬鹿よ! 男装女子という新たな扉を開いて、歪んだ癖を爆誕させない為って事!

 ——あ〜。なるほど……。なるほど?

 ——彼女自身が、それを自覚していないのが危ないのよね。見なさいよ、姉達の理想を。あんな男装されたら、世の女性の目はハートマークよ。普段は、イケメンが女装してる感じだけど。それはそれで——まぁ、危ないのだけれど。とにかく。これはこれで一件落着じゃない。王子様とエルが結ばれれば、姉達もイケメン二人に……ズキューン!

 話の途中で、ローズは急にしゃがみ込む。

 あー……まずいですわ。ええ。ええ非常にまずいですわ。何がまずいって、これぞ……わわ、わ、わたくしの理想のシチュエーション! 理想の美青年&美青年(男装だけど)が、だ、だだダンスをしている! あわ、あわわわ

「——あの、だ、大丈夫ですか?」

 ローズは声をかけられ、顔を上げる。

 姉その一!

「これ、良かったら使って下さい」

「あ、ありがとうございます」

 ハンカチを手渡される。

「ご気分でも?」

「い、いえ。ただの美青年過剰摂取による発作——あ、間違えました。ただのイケメンによる夢の共演——ではなく」

「おーい。イケメンから離れろー」

「王子様。素敵ですもの。無理もありませんわ。それに、あのお方——とても……私達の妹に良く似ているわ」

「妹?」

「あ、ええ。妹は、その、なんていうか——間違って女性に生まれてきたんです」

「はい?」

「顔も声も身体つきも男性そのものなのにっ。どうして——」

 ルナとローズは顔を見合わせる。

「初めての方にこんなお話、ごめんなさい。どうか、気になさらず。ハンカチは差し上げます。お大事になさって下さい」

「あっ。ちょっ、ちょっと待て!」

「はい?」

「お礼を、させて下さい。この、ハンカチの。お話——聞かせて下さいな」

 

 

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