【3】
普段通りに。三日目の夜、貴女に魔法をかけに参ります。
そう告げた。
私は、言われた通りに日常へ戻る。
お父様の再婚相手である義理の母。そして、義理母の連れ子の姉二人。
とても美しい姉達。
それに比べて私は——。
用事もなしに外に出ることも、部屋から無闇に出ることさへも禁じられた。
ただただ毎日を自室で過ごす日々。
おかげで裁縫や絵画だけは得意になった。台所には立たせてもらえないから、料理は不得意。洗濯もやらせてもらえない。
どうしても時は、顔を隠さなきゃならない。姉達は、余程私が気に入らないのでしょう。いつも避けられる。
本当は仲良くしたいのに……。
一緒にお買い物に行ったり、お茶をしたり。姉ができると聞いてから、一人っ子の私は夢を膨らませた。
「はぁ……」
いつだってため息が溢れる。
舞踏会のお話も、直接聞いたわけじゃない。継母も私には伝えてくれなかった。
姉達はとても嬉しそうにどんなドレスで行こうかしらとか、どんな髪飾りをつけようかしらとか。毎日そんなお話ばかり。
私は、絶対家から出ては駄目と、念を押されているのに。
私にだって、舞踏会に行く権利はある。
だって、娘は全てってお達しだもの。
確かに、姉達に比べれば私が選ばれる確率は低いけれど、それでも、雰囲気を味わうくらいは許して欲しい。
ただ一夜の夢を——。
約束の時間。
空は藍色。眩うい数多の星と、満月で迎える夜。
家には誰も残されていない。
皆んな一足先に舞踏会へ出掛けてしまった。私にはドレスも、馬車も何もない。
いつもの見窄らしい服で待つ。
「——やぁ。お待たせ。なんだわ」
上から降る声に首を上げる。
箒に乗った魔女が微笑う。
以前見たローブ姿とは異なる黒服。
まるで、軍人のようなロングコート。短い丈のズボンに長いブーツ。
「よっと」
箒から降りて地面に着地する魔女達。
「戦闘準備開始と」
ツインテールの魔女。ルナは腰から杖を引き抜き、呪文を唱える。
「ソーダシャワー」
彼女がそう唱えると、目の前が淡い水色の世界になった。
パチパチと何かが弾ける音。
音が消え、再び宵の世界が広がった時。私はとても美しい水色のドレスを纏っていた。「——綺麗。魔法みたい」
「まぁ、魔法なんだわ。あたし、魔女ですから。はい、チェックチェック。ドレスよーし。ティアラよーし。髪型よーし。靴よーし。バッチグーですわ」
「後は乗り物ね」
美しい金糸の髪を靡かせ、同じく腰から杖を引き抜き馬車を出す。
「準備完了ね」
「さてさて。では、エル。よくお聞き。この魔法は有限。時計の針が十二時を指すまでの間だけなんだわ。それまでなら、何をしてもオールオッケー。姉達とお話するもよし。王子と踊るもよし。悔いのない時間を過ごすんだわ。対価は後ほど徴収って事で。さぁ、行っておいで」




