【2】
願い。
そう問われると、言葉が詰まる。
確かに、現状を変えたい。そう思ってはいるけれど……。
「いいかい? ここに辿り着いた時点で、願いはある。って事なんだわ。ほらほら、意地を張らずに話してごらんよ。魔女に秘密はおすすめしないよー。吐き出させる魔法だって、あたしゃ使えるんだよー。えへん」
「はい。自白強要罪で逮捕。あんたねぇ、そんなもの使ったら営業許可証を剥奪されるわよ! いい、わたくし達は白く正しく美しくをモットーにしているの。自らお話して頂かないと」
「ノンノン。モットーは、派手に楽しく逞しくですー。だって、モジモジモジモジしてるからさ、ちょっと手助けしようと思っただけなんだわ。本気じゃありませーん」
喧嘩するほど仲がいいとは、こうゆう事なんだろう。羨ましいと思ってします。私達も、こんな風になる事ができたのだろうか——。
「実は——」
これが、願いと呼べるものなのかは分からない。けれど、こうありたい。こうなりたかった。その思いを並べ立てた。
二人の魔女は、ただただ静かに相槌を打ちながら聴いていた。
私が思いを出し切るまで、ただ静かに。
「なるほどなるほど。これは難しい問題ですよ。ローズさん」
「え、えぇ……そのようね」
急に二人の様子が変わる。先ほどの威勢が留守を決め込んだように。
「ふむふむふむ……」
「そうねぇ……」
「クロ」
「はい」
「一旦、お客様を別室へ。方針を考えます」
「かしこまりました」
「退屈させないようにしてほしんだわ」
「はい。仰せのままに」
二人が退室した後、魔女達は方針計画を議案し始めた。
「なかなかっすね」
「そうね……。ちょっと一旦、視てみましょう。それから考えます」
ローズは手鏡を取り出し、呪文を唱える。
「鏡よ鏡。——の者を映し出せ。クリスタルミラー」
鏡は柔らかな光を放った後、その姿を映し出す。
「ほーん。めっさ可愛いじゃん。美だね、美」
「そうね。スタイル抜群だし、二人とも美人姉妹なのは頷ける。継母も美魔女ですし。尚のこと……」
「いや、これ、どーする? どう考えても、この人達の言った事、そーですね。状態なんだわ。ちょっと、確実じゃないけどさ、あの子の為に言った可能性が大な気がするんだわ」
「ま、まぁ……そうかもしれないけど……」
「あー駄目かも。こりゃ今回もハズレな感じするんだわ」
「ちょっと! 弱気な事言わないで!」
「だってー。三日じゃ、無理なんだわ。骨格から変えないといけないレベルよ? ましてや、王宮で舞踏会とか——絶句。はい、絶句です。王子様の嫁候補なら、こっちの姉妹で十分すぎるんだわ。もう、どこの御伽噺よまったく。無理だからね、本当。骨格からは、無理だからね!」
「しっ! 声が大きい! 静かに」
「ふっ。あたしとした事が。興奮しちまったじゃねーか。すまねぇ」
「こうゆうのはね、相手の事も調べなくてはいけないの。えーと。——王子ね」
ローズは再び鏡に向かう。
「まずは、今までの舞踏会の様子と、お見合い候補の女性ね。あら、美人揃い。そうよね。一国の王子ですもの、これくらいは当然。へぇ……でも、余り興味なさそうね。ふーん。ふむふむ。ちょっ断り文句が——君は僕の女神様じゃない。ですって……ほら、泣いちゃった。罪深ね罪深。全く——これだけの美女が揃ってるのに、素っ気ないなんて……まさか」
「——し、醜女専とか?」
「有り得るわ。後は、生理的に受け付けないけど、幼い子が好みか——」
「おーう……そりゃ勘弁だわ。醜女なら、どうにかなりそうだけど、幼女は流石にお手上げだわさ」
「あとは、もう一つ。薔薇よ」
「へ? 薔薇?」
「そう。わたくしがこよなく愛する禁断の愛! 美青年&美青年よ!」
「あー……それ、薔薇って言うんだ。ローズだけに、薔薇が好きって笑」
「上手い事言っても褒美は出ません」
「要らないんだわ。なんなら、褒めてもない」
「とにかく。この場合——いけるわ」
「ん? いける?」
「そうよ。彼女の体格なら、いける!」
「——何が? え? 女の子だよ? ちょっと、いける意味が分からないんだわ」
「男装よ!」
「はい? 男装って、舞踏会だよ? 踊れないじゃん! 一緒に! 意味ないじゃん! それに、男性同士の結婚は出来ないんだわ」
「結婚は出来るわよ。彼女、女性だもの」
「いや、それはそうなんだけど……ややこしいじゃん。男装して実は女性でって」
「それは、そうだけど。じゃぁ、他に何か策があって?」
ルナは冷めきった紅茶を口に運ぶ。
「ま、まぁ。王子の好み次第なんだわ。本当に薔薇ってやつだったとしたら、女性である彼女を選ぶ可能性は低いわけじゃん。男装なんて、見た目誤魔化してるだけなんだし。良くわかんないけどさ。もうさ、彼女が当たって砕くしかなくない? 王子を」
「王子砕けたら不味い所の話ではないわ。魔法庁で咎められます。処されます。わたくし達が。はい。それじゃ——」
討論は混沌を極めた。
あらゆる情報を元に、二人の魔女は知恵に知恵を絞ってその答えを捻り出した。




