【4】
一呼吸。
「我々、妖精の種族は彼らが思うほど竜の種族を悪くは思っていません。式典などには彼らにも招待状を送っていましたから。特別仲良くしようという事ではありませんが、友好な関係ではありたい。ですが、彼らは違う。積年の恨みでしょう、我々も人間も拒絶の対象なのです。彼らが、疎う我々を害そうとした——。私は、それが六百年前の紛争なのだとの考えに至りました。ダリアの件も、延命長寿を吹き込めば、人間は飛びつく。そう知っての事ではないかと。私は——もしそうであったなら、我々には彼らを止める義務がある。同じ妖精として」
ペリカがそっと携えた剣に手をかける。争いを好まない妖精が、剣を握るまでに至った覚悟が、彼女の話が真実である事を裏付ける。
「竜種か——。あたしも逢った事ないけど、手強いのは間違いないんだわ。厄介極まりない」
「はい。かつて、竜の魔女に敵う者はおりませでした。今は、その血もだいぶ薄くなっているとはいえ、強者である事は確かです。それに、妖精国と海の国は、人間とは異なります。人間の創り出した魔法庁と友好関係ではありますが、それに縛られる事はない」
「——どゆこと?」
ルシアンは首を傾げた。
「魔法庁の法は人間世界でしか通用しないのよ。元々、魔力を持った人間が悪さしないように管理するものなんだし。だから、無免許で魔法使うと捕まる。でも、妖精の世界は違う。免許なんてものは存在しないし、ランクも存在しない。基本、交わることが無いから問題なかったのよ。この子の様に自ら人間世界に籍を置き、仕事をする場合は必要になるけど。基本、妖精国内で使う分には不要って事。だから、法に縛られない分、出会ってしまえば危険って事よ」
ローズの解説に顔面から血の気が引ける。
「えっ、それって、結構まずいんじゃ」
「まずいわね」
「なんか、流れ的にその竜の種族ってのが、怪しいんだろ? 俺らでなんとかなる事じゃない気がするんだけど……」
「んー。でも面白そうじゃん。今更、なんでこんな事したのかが気になるんだわ。ダリアも、どーうやって作ったのかもね。あたしは、続けるよ。嫌なら降りても文句は言わない。流石に、相手が悪すぎるからね」
恐怖など微塵も感じさせないルナに、ルシアンは二の足を踏む。やると言えばもう戻れない。考えあぐねている間に、ローズはやるわよと答え、ミサキは降りると言った。降りた理由は実力から。ランクⅡには荷が重すぎると。こちらからの相談事なのに、ごめんとルナに陳謝していた。もちろん、ルナは気にしなくていいと笑って返した。
皆、それぞれの決断をした。
不安だし、怖い。でも——。
「……やる」ルシアンの答えだった。




