【2】
ヒノアカ国魔法局。その病室に着いたのは、正午を少し過ぎた頃だった。ミサキからの紹介で、局長と医局長と挨拶を交わす。二人とも憔悴しきった顔をしていた。再三、早期の解決を国から迫られていると、苦笑いを浮かべる局長。初老の顔の眉間には深い皺が刻まれていた。
ルナは病室にて、被害者の症状を確認した後、自身の調べた結果を伝えた。
この症状は、ダリアだ。
局長の目が大きく見開かれた後、戸惑いながらも否定した。ダリアは根絶していると。
局長の言う事は正しい。ダリアは根絶している。だが、他に同様の症例が見当たらない。だからこそ、こうして時間が無駄に過ぎているのではないか。ルナの言い分に、反論する者はいなかった。
「——仮にダリアだとする。すると、問題なのは原材料は妖精国にしか自生しないという事なんだわ」
それは、妖精国が魔法庁の意に反していることを意味した。
「…………しかし、妖精達は争いを好まない種族ですぞ……。穏やかに過ごしている彼らが、そのような争いの種を蒔くとは思えない。それに、この資料によると、確かにダリアの原材料は根絶している筈ですが……」
重なる資料から、一枚の紙を引き抜き上に重ねる。
「それなんだわ。ダリアはこの世には存在しない。しない筈なんだわ。でもさ、この写真のまんまなんだわ、この人達。——どこかに原材料もしくはダリアが存在しているとしか思えない」
ルナが言い終えたタイミングで、客人の知らせを受けた局長は、一時の離席する。
「なんか、思っていたよりも複雑なのね。ミサキが困るはずよ」
ローズは一連の話に静かに耳を傾けていた。お茶会の帰りから、ずっと部屋に篭って何をしているかと思っていたが、こうゆうことかと納得した。
突然、ミサキの手伝いしに行くよ。としか言わず、詳しい事情を聞いていなかったから、話の状況から厄介な事は間違いなさそうだった。
暫くして、局長が戻ってきた。席を離れた時には一人だったが、戻って来た時には、二人に増えていた。
背後から現れたのは、魔法庁の魔法軍に所属する者の制服だった。真新しい白の軍服。帽子を脱ぎ、軽く会釈をする顔に、ルシアンは見覚えがあった。
「ペリカと申します」
透き通った声。
「——あの時の」
試験会場に居た妖精だと分かった。自分の事で精一杯だったから、彼女がどこの誰かは知らなかった。あの後どうなったかさえも。軍服を着ている事から、彼女は妖精でありながら軍に所属する事を選んだのだと分かった。
「ペリカ殿、先ほどのお話をこの者達にもお話いただけますでしょうか?」
局長はそう言い、彼女に着席を促した。




