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魔女の戯れ  作者: 42
Tea party in the Mirror
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45/55

【4】

「ミサキっち、お邪魔ー。元気してた?」

 そう言うと、彼女の右隣に座る。

「まね」

 ややため息混じり。

「そいや、地元帰ってるんだっけ?」

 言葉はなくただ頷く。

「——どしたん、なんかあったの?」

 ルナはチョコレートの乗った皿を引き寄せる。それから、彼女の空になりかけたカップに紅茶を注ぐ。

「参考までに——意見聞いてもいいかな?」

 ミサキは言うか迷う素ぶりをみせたものの、煮詰まりつつある状況をルナに話してみせた。

 事は、ミサキの地元、ヒノアカ国で起きた。ヒノアカは東の小さな島国で、大きな海原に囲まれ孤立している。魔法使いは、大陸ほど多くはなく情報も少ない。

 先月、とある事件が起きた。

 被害者は外傷がない。ただただ虚であった。まるで、魂が抜かれたように言葉を話すことも、自ら食事をとることも、動くことも出来ず、虚空を見つめる。

 そんな事が立て続けに続き、被害者は八名にも及んだ。魔法局からの依頼で、協力して解決に動いているが、これといって大きな手掛かりがないまま今日に至ると語った。

 まず、病院での検査結果は特に異常は見られない。脳も正常で何かしらの薬や細菌の類ではないという。二人、三人と続き、これはとても普通ではないと魔法局に相談があった。もちろん魔力の関与を探ったけど、それも全くない。だが、明らかに異常なのだ。

 被害者には目立った共通点はなく、被害にあった場所もバラバラ。

「手詰まりでさ、もうどうしていいかわかんなくって」

 そう言いながら、チョコレートを口に放り込む。

「何も分からない状態だから、今は点滴で対応してもらっている。こんだけ痕跡がないってのも——怖いんだよね」

 ミサキの言う通り。

 魔力の痕跡がない。ただの人なら残らなくても納得するけど、状況的にそれは考えられない。すると今度は、なぜ残さないのか、残せないのかになってくる。いづれにしても、普通ではない事は明らか。

「うーん。確かに怪しいんだわ。虚か……ごめん。今すぐの返答は難しい。うちに戻って調べてみないとなんだわ。何かわかったら連絡する」

「——うん、ありがと。はぁーでもほんと、ここに来れて少しは羽を伸ばせるけど——帰るの嫌だなぁー」

 胸の中に溜めてた物を吐き出して、少し気が楽になる。

「場合によっては、あたしもヒノアカに行くんだわ。そん時は宜しく」

「まじ? 来てくれるの?」

「ヒノアカ行った事なかったし。なんなら、ローズとルシアンも連れてくんだわ」

「——え? ルシアンって、あの?」

 ミサキは驚きの言葉にルナを凝視する。

「そうだよ。今、うちで働いてもらってるから」

「うっそ、ほんとに? 何、結婚でもしたの?」

 ミサキの言葉にルナは首を傾げる。

「なんで、そーなるん。ただの仕事仲間だって。ローズと一緒」

 全く悪びれせずに言い放つ。

「まじか——」

 あんなに分かりやすいのに、今一つ伝わってなさすぎて、ミサキはルシアンを不憫に思った。学生時から変わらずルナ一筋なのは良いんだけど、一向に一切の気持ちも分かってもらえず、同級生から仕事仲間にただ昇華しただけ。

「この前ランク昇格してるから、こき使うんだわ」

 衝撃的事実。

 ランク昇格しているのもだが、下僕として命令している様子が容易に想像できる事が。開いた口にチョコレートを放り込まれる。それを咀嚼しているうちに、漏れた話に火がついた。魔女達の格好の餌食となったルシアンが、何も知らずに今も尚、気落ちしている事は誰も知らない——。

  

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