【3】
とりわけ、気難しい座学の先生が結婚した話は、大いに盛り上がった。表情筋の死んだお堅い先生のお相手は、まさかの医務室の保健医だった。お淑やかで、柔らかい小柄の女性。男子生徒の人気も高く、よく保健医の先生か、座学担当の淡麗眼鏡先生かで言い争いが起きていた。男子って本当——。と当時は冷ややかな目で見ていたが、それも今は懐かしい思い出だ。
いったい、なんて言って告白したのかしら?
そんな疑問から、あらゆる可能性の告白パターンを言い合うのは、女子の特性だろうか。いや、意外と彼女の方からじゃないか。とか、生真面目なんだから手紙じゃない?など面白がって憶測を述べる中、実は——。膝をついて顔を赤くして花束を渡したそうよ。の解に、全員目を覆い天を仰いだ。
絶対に有り得ない。が有り得た。
「まじかー」
誰かが放った言葉に頷くしかない。
「——うん。なかなか面白かったんだわ。アンジェリカの情報だから、間違いないんだわ。やるじゃん、ロック」
くっくと笑いながら。かつてお堅いからと、岩と名付けたあだ名で呼ぶ。
「本当。あのロックがねぇ。ちょっとどころか、その場面を見たかったよー。ねぇ」
そう言われて頷く女性二人。
ミニマムトリオと、当時から呼ばれていた三人組。小柄な彼女達は、色違いお揃いふんわりボブは今も変わらない。水色のスイ、薄紫のシエ、薄緑のハナ。姉妹でもないのに、背丈や趣味まで同じ。使い魔まで色違いの鳥で、ほんといつも一緒だった。今日もフリルのついた可愛らしい服を色違いで着ている。
ロックの話で盛り上がった後は、それぞれの恋話トークに自然と移ったが、誰一人として一抜けすることのなく流れた。
そんなに理想高いわけじゃないんんだけどなぁ。と呟いたのは、この中で当時より陰でファンクラブが出来るほどの人気があった、マリアーヌだった。学校で女子人気一番の男の子からの告白を、魔法庁の幹部になれたら考えてあげると振った伝説から、説得力がないことは確かだった。まぁ、ただ単に断り文句だったかもしれないが、当時は振られた彼が気の毒でしかなかった。
「ねーねーローズ。そういえば、今年のコミシェ行った?」
ルナの隣に座るローズに声をかけてきたのは、同じ趣味を持つアンナとフィリカ。アンナは長身で長い赤毛を三つ編みにしており、声音もやや低め。フィリカは白髪の短髪。
「行ったわ」
ドヤ顔を決めるローズは、今年のコミシェトークを始めた。ルナは、ここ座りいなよと席を譲り、自身はカップ片手に反対側へ移動する。




