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魔女の戯れ  作者: 42
Let's 昇級試験
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40/55

【5】

 周りには、監視要員が集まった。

 二人対三人。

 剣を握り、見据える。

 絶えず微笑を続ける双子は、剣を構える。高らかに鳴り響く開始の合図と共に、一人が素早く切り込んだように見えたが、瞬間。背後の壁面が大きな音共に崩れた。砕かれた石煙の先に見えたのは、地面に突っ伏した男の姿。

 吹っ飛ばされた!

 ——ゴリラだから。ゴリラだから。ゴリラだからゴリラだゴリラゴリ…………

 その言葉が脳内を支配する。

「よそ見かい?」

 いつの間にか、目の前に人が立っていた。振り下ろされた剣を、咄嗟に剣で受ける。

 鉄同士がぶつかる音が響く。

「っ——」

 あーーっ重い‼︎。歯を食いしばる。

「うん。良い反応」

 なんつー馬鹿力!

 手も足も震える。おおよそ見た目からは想像出来ない力。ルナがそう異名をつける理由を理解する。

「心配しなくてもいい。彼なら医務室へ送られるからね」

 ルシアンとは異なり涼しい顔を見せる。

「顔見知りだからって手心を加えたりしないよ」

 耳元でそう囁くと、一度距離をとる。

 解放されたルシアンは大きく息をする。手が痺れて、剣は随分と重い。急いで呼吸を整え、脳内に響くゴリラコールを頭を左右に振り払う。

 耳には、響き合う剣撃の音。どこかで、もう一人が健闘しているのだ。だが、振り返る余裕はない。改めて、剣を受けて分かった。自分では、剣で勝つことは無理だ。相手は軍団長。ルナの言は正しかったと、嫌でもわからされる。

 ルシアンは防御に徹した。何度と攻撃を受けても防いだ。

「——成程。そうだね、確かに。ルナちゃんも居るから当然か」

 防御一点のその姿に、聞こえないほどの小さな声。

「では、少し本気を出そう」

 そう言って加速する。どれ程耐えられるか——見たくなった。

 別に意地悪をしているわけじゃない。ローズと一緒に住んでいるから。とか、そんな私情は挟まない。ただ純粋に、彼の魔法防御の力が如何程か。軍を預かる身として興味が湧いた。故に、打撃はさらに重く、早く。連続で。

 息は荒く、額からは汗が床へリズムよく落ちる。足は震え、明らかに疲弊している。慣れない魔法の連続。それでも、その瞳は力強く前を見据える。

 ——良い瞳をしている。

 ふっと笑う。

 うん。いいよ、すごく良い。まだ時間はあるね、よし。

「僕はこれから、強力な一撃をあげる。正面からだよ。それを防いでみて。息を整えるのに一分あげる——頑張って」

 試験管自ら攻撃の予告と激励に、周囲は騒つくと同時に、救護班を呼ぶ声が聞こえる。

つまりは、防ぎきれなかったら即治療の大怪我を負う事の意。

 一番動揺しているのは、ルシアンだった。これ以上の攻撃? ——一気に血の気が引く。

 思考が時間を奪う。

 だめだ、落ち着け。落ち着くんだ——。

 ふぅと息を吐く。

 あと十秒。の声がかかる。

 まずいまずい! もう、やるしかない。やるしかないんだ!

 えっと——。もう一度深呼吸。

 礎 遥か不来方 防止の砦

「グラーバウ」

 ルシアンの防壁はフランソワの攻撃を正面で受け止める。厚い氷壁は、一撃を受けた瞬間粉々に粉砕するも、途切れず流れ出た氷に補強され、かろうじて防御の体をとっているが、押し負けているのは確か。足の力が徐々に抜け、後退りを余儀なくされる。

「——ぐぅ」

 ここまできて、負けたくない——。強く思い、力を捻り出す。

 耐えろ、耐えろ、耐えろー——と、己に言い聞かせた結果。

 手も足も出せず、ルシアンを見守るモモコに変異が訪れた。体は光を纏い、溶けて形を成す。

「——進化か」

 誰かがポツリと言った。

 神々しく光を放ち、やがて消え失せる時。美しい桃色の毛並みの狐には、尾が一本増えていた。体躯も少し大きく成長している。狐は四本の尾を揺らし、尚も大人しく主を見つめる。

 結局の所、ルシアンは押し負けしてしまい、仰向けで天を仰いでいる。

 押し負けた。とはいえ、大きな怪我がないのは幸いの事。

 それに、使い魔が進化したということは、主がその分成長した証。

「進化か——。まさか、試験中になるとはね。ほら、君も起き上がって見てみると良い」

 手を差し出され、勢いで起き上がる。

「あ——」

「君の使い魔だろう? 立派な狐だね。美しい毛色をしている」

 優しい眼差しで、こちらを見ているモモコには、確かに尻尾が増えていた。

「君の試験は終了した。行って声をかけてあげるといい」

 言うと、フランソワはルシアンの肩を軽く叩き、去って行った。

  

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