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魔女の戯れ  作者: 42
Let's 昇級試験
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38/55

【3】

 熱風が肌を掠める。

 辺り一面瓦礫と火の海。炎は今もなお燃え盛り煙が充満する。咄嗟に腕で鼻を覆う。

 足が竦むほどの大火事。けれど、立ち竦んでいる時間はない。

 獣であっても、この瘴気の中人を探すのは困難だろう。まして、この試験に用意されているのは命を持たないもの。だが、こう火の手が早いと、もたついている間に命が消えてしまう方が——。ルシアンは思考する。

 俺は火を消す。

 だが、範囲が広い。時間もかけられない。それに、水圧を間違えれば瓦礫もろとも消し飛ばしかねない。

「モモコさん」

「はい」

「俺は火を消します。モモコさんは、人命を優先して欲しい。危険は承知してますが、引き受けてくれますか?」

「はい、勿論です。お任せください」

 一切の迷いはなく。

「出来るだけ早く火を消します」

「私の事は心配なさらず。今は、火を消す事に専念なさってください。大丈夫——あなたなら、ちゃんと出来ますから」

 そう言って、獣の姿になり駆けた。

「よし」

 ルシアンは瞳を閉じて深呼吸する。

 残り時間は八分。

 雨のように水が降り注ぐ。

 空より降り落ちる水は、まだ優しく。炎にただ飲み込まれ、蒸発してゆく。

 まだだ。まだ、全然足りない。

 徐々に水圧を上げていく。慎重に。

 特訓した。それはもう沢山。感覚を頼りに、ルシアンは火を消していく。

 空からの恵みの雨を浴びながら、獣は瓦礫の中を捜索する。当てずっぽうに探したところで、時間を無駄にするのは分かりきっていた。

 ルシアンが集中している。初めてあった時と比べ、魔力のコントロールは格段に上がった。それは、使い魔であるモモコにも影響する。

 集中。

 感覚を研ぎ澄ます。耳、鼻、目、気配。

 すると、視える。

 異質なものが、どこにあるのか——。

 モモコは、迷うことなく三つの命を救う。主の命のままに——。

 

 九分と五十八秒。

 なんとかギリギリの時間で、ルシアン達は試験を終えた。

「——やった」

 煤だらけの顔が綻ぶ。

「はい、良く出来ました」

 そういうモモコも、煤だらけ。

 会場を出た所で、固く絞った濡れタオルを渡されると、熱った顔を拭く。

 

 魔法実技試験終了後。

 実技に失格した者は、有無を言わさずここで帰される。受験者は数十名居たが、残った者は片指で足りる程。半分以上が、魔法実技試験で振り落とされた。

 帰路に着く項垂れた後ろ姿を見ると、自分が通った事が不思議でならない。

「モモコさんのお陰だな。一人だったら、無理だった」

 使い魔を良しとする。実際、使い魔との連携が鍵だったと思った。初めから、二人で協力する。を、想定された内容だったと、今になればこそ思う。

「いいえ。例え二人でも手に負えないからこそ、このような結果に。あなたの努力あってこそ、私も成長できたのですよ」

 モモコは煤の取れた顔で微笑む。その美しい桃色の髪には、未だ格闘の跡が残る。

  

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