【5】
黄色い奇声とざわめき、波のように広がり色めく。
突如として現れたそれに、言葉を失う者も少なくない。
まるで、絵から抜けだしてきたかのよう。
一人は、アーサー。
金髪に緑の瞳。騎士の彼は、白銀の甲冑を身に着けている。
もう一人は、アルトス。
黒髪に赤い瞳。敵国の騎士の彼は、黒い甲冑を身につけている。
魔法で本物の素材を加工した甲冑を纏う凛々しい姿は、普段より身についている本来の彼らを引き出す。
何より、二人の独特の距離感と雰囲気は、同志の人達の心をかき乱す。
プロデュースした側のローズでさえ、あまりの本物具合に、耐えきれず何度も部屋を退室したぐらいだ。
遠くにいても、本物が居た! との噂が耳に入る。
双子の効果は絶大で、古参のファン以外にも沢山の行列が出来、ミシェルの本は閉会を待たずに完売となった。
本が完売した後も、彼らの周りには人だかりが出来、写真を撮らせてくださいの声が後を絶たない。
アーサーが柔らかく微笑めば奇声が上がり、アルトスが剣を構えれば歓声が上がった。
「流石軍団長殿。普段通り」
屋台で昼食を買い、飲食スペースからの感想。
「あの顔で実力があるとなれば、相当モテるんだろうなー」
ルシアンは羨ましそうな声をあげる。
「そりゃモテるんだわ。バレンタインとか、とんでもない量のチョコ。でもなー残念ながら妹しか眼中にないんだわ。縁談とかも断ってるらしいよ」
ルナは唐揚げを頬張る。
「そうなんだ。勿体無いきがするけど、そればかりは本人達の気持ち次第だもんなー」
「うんうん。妹萌えが治らない限り、厳しいだろうなー」
いろんな事情があるんだな。
と、ルシアンは思い、買ってきたハンバーガーを頬張る。
「それで、買ってきた? 本」
話しかけられ、急いで飲み込む。
「あ、うん。一応」
「じゃ、食べたら交換するんだわ」
ローズはまだあちこち回っている中、あまりの人の多さと熱気に疲れ果てたルナとルシアン。昼食後、事前に決めていた本の交換を行う。
ルナから本を受け取ったルシアンは、その中身に赤面する。
「ほら、必要でしょ? ルシアン君のために、なるべく凄いのにしたんだわ」
ほぼ全面肌色の薄い本を勢いよく閉じる。
「お、真っ赤」
ルナは気にする事なく、ルシアンが選んだ本をめくる。
「ふむふむ。——ちなみに、これサンプルとか読んだりした?」
「え?」
バッと、ルシアンの目の前にそのページを見せつける。
「あー‼︎」
飛び込んできたのは、破廉恥な肌色の男女。
そして再び赤面。汗も吹き出す。
「え、だってそれ、薬草の本——」
「だね。薬草の擬人化みたい。表紙に騙されたねー」
「う……ごめん。いや、その、そういうつもりじゃ」
「わかってるって。ルシアン君にそんな度胸ないもん。これとこれも全年齢だし。コメディタッチだもんね。あ、あたしのは全部そうゆうのだから。自室で読むのをおすすめするんだわ」
悪戯に笑う。
からかわれてる——。
でも、ルナが楽しそうに笑う姿を見るのは、悪くない……。
熱の引かない体を冷やすように、アイスコーヒーを喉に通す。




