【4】
ローズ達の同志談義は花を咲かせていた。元より、ローズは依頼主の作品を愛読している。盛り上がらない筈もなく——。
いつにもなく饒舌に、楽しく話をしている二人に、呼び出された双子は出された紅茶を飲みながら、微笑ましく見ている。
「あぁ——ローズ。あんなに楽しそうに」
「本当だね。何年ぶりだろう。あんな楽しそうな笑顔——」
うっとりと、恍惚の表情を浮かべる。
宝物を見るような視線。
幼少期より、蝶よ花よと愛でてきた妹。だが、大人になるにつれ、だんだんと距離が離れていった。そして、終いには家を出ていってしまった。優秀な妹。同じく魔法庁に就職すると思っていた。それなのに、離れ離れ。一年に一度も会うことは叶わず。妹が、何故家を出たのか理由もわからずはや数年。一緒に仕事するのが、幼馴染のルナでなければ、全力で家に連れ戻す事も視野に入れていたが。そうすれば、妹が悲しむ。きっと口すらきいてくれなくなるかもしれない。それは、離れているよりも耐え難い。だから、容認している。
双子は片時も離さず、笑顔のローズの写真が入ったロケットを持ち歩いている。
朝起きたら、おはようを。
夜寝る前に、おやすみを。
それが、二人の日課だ。
いつ会えるか分からない大切な妹からの、一本の電話。
二人はそれはもう舞いがった。
理由なんてどうでもいい。ただ、会えるのならば——。
緑の瞳は、その笑顔を焼き付けるように熱く——見つめている。
いつまでも尽きない話を、ルナは遮る。こうしなければ、夜になり朝がきてしまう。
そろそろお腹も空いてきた頃合い。
一旦話は置いといて、皆でご飯にしようと提案し受け入れてもらう。
食後。ローズは今回のコミックマルシェのパンフレットを持参する。
広げると、アルファベットと数字の組み合わせが、ずらりと並んでいた。AからZ。一から百。それ以外にも、大きなブースが幾つか。規模の大きさが窺える。
「今回、ミシェル先生はDの三十六。そして——」
ローズは、パンフレットの場所を指差す。それから、己の欲望を満たす為。それぞれに行く場所を示していく。
そこで本を買ったあとは、自由にしていいとの事だ。
「ルシアン君は、どーする?」
「んーどうしよう。俺、あんまよく分からないから……」
「あたしも。それじゃさ、何冊か買ってお互いに交換して読むってのは? 面白そうなんだわ」
「えっ、俺、自信ないなぁ」
「だって、これ見てみなよ。こんなにあるんだから大丈夫だって」
ルシアンはルナに押し切られる。
「二人とも甘いわね。——でもまぁ、新たな出会いがあるのは確か。わたくしの邪魔さえしなければ、どうぞお好きに。ちなみに、この日は屋台なんかも出るから、疲れたら休んでいても構わないわ」
そう言って髪をかきあげる。
「はぁ——」
二つ吐息に近いため息。
何を言いたいかは大体察しがつく。
「前日には会場近くのホテルに泊まります。ここはもう手配済みよ。当日は、兄さん達に荷物搬入と設置、売り子まで全てやって頂きます。ミシェル先生の言う事をよくきいて、決して迷惑をかけない事。余計な事も言わない事。役に徹して頂きます。宜しいかしら?」
「勿論だとも」
「仰せのままに」
即答。
あーいちいち距離が近いのよ、もう!
「ミシェル先生! 強く、生きて!」
「……ローズさん。頑張ります……」
心配なのは、彼女の方。
推しのペアに扮する兄さんたちに耐えられるかしら。わたくしは、無理。きっと目を見て話せない。何なら逃げ出したくなるわ。
でも、それはそれとて、推しは見たい。
不安と期待が入り混じる。
「それじゃ、解散。わたくしと先生は少し衣装について話し合います」
こうして、当日がやってきた。というわけだ。




