【3】
「やぁ、久しぶりだね。ローズ元気にしていたかい?」
弾んだ声音が二つ。
お土産だよ。
と、微笑みながら。
ブランド服の袋を多数、靴の箱多数。有名チョコレート店の紙袋や豪華な花束まで持参してきた男性二人は、同じ顔をしていた。
「紹介します……わたくしの兄達よ」
少々距離をとりながら、そう言う。
「初めましての人もいるね。僕はフランソワ」
「初めまして。俺はフランシス」
サラサラの金髪に緑の瞳。肌は白く、唇は赤く。絵に描いたような双子の王子に、依頼主は言葉を失う。
「その……先生。これで手を打ってもらえないかしら」
上背問題なし。体格合格。顔は文句のつけようがない。
ローズは、己が自由になる為に、実の兄達を生贄として捧げた。
本当は、こんな手使いたくなかった。兄達には会いたくなかったから。ずっと避け続けていた。けれど、どうしても。どうしてもよ。譲れないもはあるのよ。
「——このお二人が、アーサーとアルトスを?」
「はい。わたくしのお願いならば、喜んで。と言ってましたので」
「正直に言っていいですか……?」
「え、ええ」
「面が良すぎ! 私の命が持ちません‼︎」
あまりの容姿の良さに、直視できない。
彼女は両手で顔を覆い隠す仕草。
「わかります。わかりますわ、先生。そう。まるで絵画から抜け出してきたかの様な——それでいて、双子という奇跡。さらに、見てください。あの距離感! あれが自然体。あぁなんて光景。わたくしの新たな扉を開いた元凶があれです! わたくし、それはもう自分の存在が邪魔でならなった。彼らの世界にわたくしは不要。そう。わたくしは無。わたくしは壁となって、ただ彼らの仲睦まじい姿を見るだけの存在になりたかった。このように、わたくしに花束なんて解釈違いなのです! 先生なら、わかっていただける筈です。もう二人だけの世界でずっと、いちゃついててくれって」
「——それは、そう!」
意気投合し、二人はガッチリと握手をする。
「ありゃりゃ。盛り上がってるんだわ」
「やぁ、ルナちゃんも久しぶり」
「お久なんだわ。ところで仕事、大丈夫なん? 結構忙しいんじゃ?」
「愛する妹の頼みとあれば、仕事など些細な事だよ」
「大丈夫。速攻で片付けてきたから」
「相変わらず、妹萌え兄弟なんだわ」
ま、一方通行なのが気の毒だけど。
「ところで、ルナちゃん。彼はどちら様だろうか?」
双子の強い視線がルシアンに向く。
「あ、ルシアン・ロゼです。ここで一緒に働いてます。宜しくお願い致します」
「一緒に?」
「ローズと?」
あ、これ、またあのパターン?
ルシアンに過ぎるハロウィンの記憶。
双子は微笑みを残しつつ、彼を見定めるように見ている。
「安心してよ。ルシアン君は、ローズのタイプじゃないから」
言いながら、ルナはルシアンの肩を叩いた。
急に思い人から触れられた彼は、頬を赤く染める。
その姿を見た双子は、瞬時にルシアンはルナに気がある事を見抜く。
「ならば良しとしよう」
「そうだね」
雰囲気が柔らかくなる。
「ちょいちょい、ルシアン君。いいかい? あの二人はローズの事となると、目の色変わるから十分気をつけた方がいいんだわ。知ってると思うけど、ああ見えて魔法庁お抱え魔法軍の軍団長だから。めっちゃ強いから。まじ強いから。怒らせないように。ローズにはあんまり近づきすぎないようにするんだわ。セコム発動しちゃうから」
こっそり耳打ち。
「あ、うん。わかった」
急に吹き出す汗を必死に抑えながらそう答える。




