【2】
その人は、ローズが神と崇める存在。
そう。
毎日、活動チェックをする程に。
「知り合いだった?」
ルナの問いに、お互い目を合わせる。
「とんでもございません! わたくし如きが知り合いだなんて。恐れ多い!」
力の入った声。
「……ふーん。ま、いっか。今回の依頼なんだけど、売り子がご親族のご不幸で急に来れなくなったらしいんだわ。今度のコミックマルシェ、だっけ? その時に一緒に販売して欲しいんだって。急すぎて、なかなか人見つからなかったらしいんだわ。引き受けるけど、良いよね?」
なっ——。
ローズに激震が走る。
いけません‼︎ いけませんわ! そんな、神と一緒にだなんて——。あのテーブル一つの境界線を越えるだなんて、わたくしにはとても、とてもじゃないけど恐れ多すぎますわ! それに、それでは他の作品を買いに行けない——。
嬉しさと悲しさと。
気持ちが反復横跳びを続ける。
「ちなみに売り子は一人でいいらしいんだわ。でも条件が一個あって、コスプレ必須。誰だっけ——」
「あ、このアーサーというキャラクターなんですが……」
そう言うと、一枚のイラストをテーブルに提示した。
金髪に鮮やかな緑色の瞳。理想の王子姿のキャラクターだ。
「嘘でしょ‼︎」
ローズは叫ぶ。
「ん? どしたん?」
「アーサーだなんて、超絶大人気キャラよ! コスプレする人は数多。ですが、身長や体格顔つきから、これぞ完璧と言えるアーサーになれる人はいないのよ。ハードルが高すぎるわ! ルナは性格が滲み出るから無理。ルシアンは華がないから無理ね」
「はは……自覚してるとはいえ、はっきりそう言われると……結構くる」
空気のように黙って見ていたルシアンは、被弾し傷を負う。
「ま、性格悪いのは否定しないんだわ。それじゃ、ローズがやればいいんだわ。あたし達詳しくないからさ。キャラを熟知している人に任せた方が間違いないんだわ。いいのかい? あたし達がやって、解釈違いなんて起こしても」
「やめて! ぶっ飛ばすわよ」
拳を作る。
「はい、決まりー」
「ちょっと待ってよ——困るわよ。本当に切実に困るのよ。その——わたくし。コミシェは毎年命をかけて参加しているのよ! 沢山買いたい本があるのよ! 先生のお役には勿論立ちたいわ! でも、でも——」
ぐぬぬ——。眉間にこれでもかと皺を寄せる。
「本ならあたし達が買いに行けば問題ないんだわ」
「ルナ……」
「——あなた達、コミシェには行った事あるのかしら?」
「ない」
ルナとルシアンは同時に答える。
「はぁ……」
深いため息をつくローズ。
「いい? コミシェは戦場なの。軽い気持ちで行くと、怪我をするわよ」
ローズの力説は二人に響かない。
そんな大袈裟な。な雰囲気だ。
「くっ——こうなったら背に腹はかえられない」
この手だけは使いたくなかったけれど。
「ミシェル先生、その。一つご提案してもいいかしら」
床に膝をつき、頭を下げ進言する。




