【1】
「これは、戦よ。敗北は許さない。いざ、出陣‼︎」
いつになく気合いが入ったローズの一声に、蜘蛛の子を散らすように、各々敵将を打ち取りに行く形相で、目的の場所に向かった。
事の発端——。
その日、ローズは自室にて本棚の整理をしていた。
「大分増えてきたわね」
几帳面に、作家毎タイトルもアルファベット順に並んでいる。
特にお気に入りの作家は、毎回欠かさず新刊を購入している。
その中から特にお気に入りの一冊を手に取り、パラパラとページをめくる。絵柄からストーリーに至るまで、全てがパーフェクト。「もうすぐね——」
卓上のカレンダーに大きく赤く囲まれた日。その日を、ローズは待ち侘びている。
全国コミックマルシェ。
年に一度だけ大々的に開催される、主にアマチュアのコミックマルシェ。
略してコミシェ。
漫画やイラスト。グッズなど幅広く販売される。ローズのお気に入りの作家も多数出店する。
アマチュアでも、手慣れた人もいれば、新人もいる。新しい作品との出会いも魅力的な部分。新しい可能性も多く秘めている。キャラクターの格好をする人も居て、その空気感も独特。この日だけは、何がなんでも現地へ行くと固く心に決めている大事な日だ。
「最近仕事も増えたし。去年よりも予算は多めに用意した。服装は動きやすく、鞄は大きいものを。それから、お金はお釣りの出ないように。それから、ほんの気持ちも作らなくちゃ」
薄い本を棚に戻すと、持ち物のチェックを始める。
「あら。お菓子が切れているじゃない」
差し入れにとお菓子を詰めようとする手が止まる。
「仕方ないわね。買いに行かなくちゃ」
ローズは財布を片手に麓の町まで向かった。小分けのお菓子を複数買い込み、城に戻るとルナとルシアンがお客様の相手をしているのに気づく。
ローズは急いで自室に戻り、買い物袋を置くと、再びカレンダーを見る。
「あぁ——間に合わないと困るわ」
ローブ姿に着替え、焦り部屋を訪れた。
そして、見覚えのある依頼人の顔に、ローズは硬直する。
「——ミシェル——先生?」




