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魔女の戯れ  作者: 42
マジックランプコモーション
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28/55

【5】

「犯人は現場に戻る。ってやつなんだわ」

 背後より声。

「どうしてここに居るのか。って、思ってる? そりゃ、あんたが言ったからなんだわ。悪には裁きを——って」

 返事は返ってこない。

「おーい。聞こえてるー? ベルズ」

 名前を呼ばれ、ようやく振り向くと、その腕には黄金のランプがあった。

「あんた一人か」

「一人じゃない。相棒も一緒さ」

 肩に立つ小さな黒猫を見やる。

「いつからだ」

「最初から。あんたが、城に来る前からなんだわ」

 男の顔が強張る。

「あんたは——魔法を使える。でなければ。あの霧の中を、呼ばれてもないのに、迷わずに来れる筈がない。あんたは魔力を辿って、城に着いた。初めからあたし達を利用するつもりで、あの森に入ったんだわ」

 男は無言のままだ。

「だから、利用されてあげたんだわ。筋書きはこう。あんたは確かに、この遺跡で魔法のランプを見つけた。魔法が使えるんなら、そのランプに残る魔力で分かった筈。そこで、欲望に駆られたあんたは、その魔法のランプを、何がなんでも自分の物にしたくなった。だから、本物のランプを密かに隠し、偽物を用意して発見させる。鑑定後、本物のランプは仲間達が隠し持っている。と、嘘を流す。そうしてテントを襲わせた後、偽物のランプを持ち出し、それが本物であるかのように演出した。あたし達に護衛をさせ、追手を一網打尽。偽物のランプを手放し、一件落着。そ邪魔者が全て消えた所で、本物の魔法のランプを持ち帰る。その一歩手前が今。そう? まぁまぁいい線いってるでしょ」

 推察を聞く男にさらに続ける。

「無登録の無免許。ベルズ、あんたの名前は魔法登録されていない。問い合わせたからね、確かなんだわ。どうして、魔力のある人間が、魔法登録必須で、魔法学校に通い、魔法を使うのに免許が必要か知っているかい? 自分の力を正しく理解し、その歴史を学び、倫理や人道を持って使う為なんだわ」

 ルナの持つ杖は深紅のロッドへと姿を変える。

「——魔女一人が、魔神に勝てるとでも?」

「魔神か。本物だったら、負けるかもね」

 ベルズはニヤリと笑い、勢いよくランプを擦る。

 だが、何も起こらない。

「——そんな筈はない! これは本物だ!」

 そう叫びながら、何度もランプを擦る。

「出てこい! 魔神!」

「学がない。ってのは、そういう事さ。魔神はとうの昔に、ランプから解放されてる。そのランプに残っているのは、ただの残滓に過ぎないんだわ」

 ただの抜け殻。

 ベルズはの手から、ランプは砂の上にずり落ちる。

「欲望は人を盲目にするんだわ」

 男は俯く。

「来い。——マディオン」

 地面が揺れる。

 男の言葉に引かれるように、それは砂の中から現れた。

 三メートルほどの巨体のトカゲ。鱗は赤く、ルナを睨みつける。

「……知ってるぜ。使い魔は、魔力に比例するってな。あんたのその、ちっこい猫。それがあんたの魔力だ」

「お、ムカチャッカファイヤー」

「お前を消せば——丸く治る!」

 トカゲは、突然炎を吐いて襲って来る。

「ほーん。あたしに火力勝負を挑むなんて」 ルナはくすりと笑う。

「ここが砂漠で良かった」

 呟く。

 空中へ上がり、ロッドを下へ向ける。

 舞い散れ灰塵

「ルージュダスト」

 光のような一筋の炎は、大トカゲからわずかにずれた場所に落ちた。

 下手くそが!

 男が心の内で叫んだ瞬間。砂漠には大きな音と共に巨大な穴が現れた。

 そして、ふわりと舞い上がってきた予熱で、大トカゲの鱗は焼け爛れ、その場に倒れた。

 灰燼となる一撃。

 わざと、ずらしたのだと気づく。

「こういう技って、普段は使えないんだわ。ぜーんぶ、燃やしちゃうから」

 そう言いながら、地上に降り立つ。

   

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