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魔女の戯れ  作者: 42
マジックランプコモーション
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24/55

【1】

 ——走る。

 息を切らしながら、ひたすらに。

 弓矢が腕を掠め、肌を切り裂く。

 背後から響く怒号。

 それでも、ひたすら走る。

 もうすぐ——もうすぐの筈だ——。

 濃い霧。

 辺り一面に濃霧が広がり、追うも追われるも飲み込まれる。

 一か八か。

 霧の中を走る——。

 

「魔女の城……本当に、あったのか——」

 在る。とは知っていたが、魔女は来るものを選ぶという。自分が、果たして魔女のお眼鏡に叶うかどうか——賭けだった。

 賭けに負ければ、俺は捕まり、口を封じられる。

 全身に傷を負い、汗だくの泥まみれ。上がる息をどうにか整える。

 暫く門前で立ち尽くしていると、静かに扉は開く。

「こんにちは。どうぞ、中へお入り下さい」

 少年が現れる。

 男は、言われるままに、魔女の城へと足を踏み入れた。

 

 魔女。

 そう言われると、誰しもが老婆の姿を思い浮かべるが、男の前に姿を見せた魔女は、想像以上に年若く驚く。

 冷たいお茶を差し出され、乾燥し切っていた喉を一気に潤す。

「すまない。助かった」

 口を拭う。

「相当危ない橋の様ね。困るのよ——あんな物騒な連中にうろつかれるの。それで、何故追われていたのかしら。話くらいは聞いてあげてもいいわよ」

 金髪の魔女は冷ややかな視線を送る。

 男は、感じ取る。

 別段歓迎されているわけではない事に。話の内容によっては、恐らく。容赦なく外に放り出される。そうすれば——男に待つのは。

 音を立てて唾を飲み込む。

 そして、懐にしまい込んでいた、それを魔女の前に差し出す。

「魔法のランプ。奴らの狙いはこれだ」

 突如差し出された遺物に、魔女達は顔を見合わせた。

「俺は、ベルズ。発掘の仕事をしている。これは、先日。サリア砂漠の遺跡で見つけた。本物だったら世紀の発見になる。すぐに鑑定してもらった。ところが——偽物だった。がっかりさ。皆方を落として慰め合った。でも、すぐに事件は起きた。俺達が滞在しているテントが何者かに襲撃された。仲間は、みんなそこでやられた。俺は、たまたま外出していて助かったが……。おかしいと思った。このランプが見つかった途端に、発見者を消すなんて——。だから、このランプは本物だったんじゃ無いかって考えた。手柄を全て横取りする為だったんじゃないかって。俺は、仲間の為にも、このランプを守らなきゃいけない。俺達が見つけたんだって。でも、奴らは俺を追ってきた。俺を始末して、このランプを手にするつもりなんだ」

 男は経緯を話し終えると、魔女はランプを手に取る。

「——魔法のランプね」

 ルナはじっとそのランプを観察する。

 ただの黄金のランプ。装飾は一切ない。

 伝説では、魔法のランプには魔神が住んでいるという。ランプを擦ると、その魔神が現れ願い事を何でも三つ叶えてくれると。

 魔法使いでも敵わない程の力を持った魔神。そりゃ、魔法が使えない人間からすれば、喉から手が出るほど欲しい代物だろう。

 でも、今のご時世。

 こうして魔女や魔法使いの制度が整備され、かつての魔神の様に、願いを叶える仕事をしている者も多い中。仮に魔法のランプが本物であっても、その価値はどれほどのものであろう。

 ——やっぱ、無償ってのが絶大か。

 仕事で在る限り、対価は必然。

 ——そう考えると、やっぱそれなりの価値にはなってくるのか。そもそも、これ今も魔神住んでるん?

 ルナは小首を傾げ、徐にランプを擦り始める。

「あ——」

「え」

「ちょっ——ルナ?」

 その場を唖然とさせるものの、残念ながら魔神は現れない。

「んー。やっぱこれ偽物なんだわ」

「——あんたねぇ、万が一本物だったら、どうするつもりだったのよー」

「そん時はそん時。なんか適当に三つ願い事すれば済む話なんだわ。ジュース取ってきてとか」

 ——ぐぬぬ。パシリに使っていいものじゃないわよ! 全く。

 怒りをグッと飲み込む。

「——偽物か……」

 男は残念そうな顔をした。

「でも、偽物ならどうしてそこまでして欲しがるのかしら」

「本物だって思っていれば欲しいものさ。奪ってから試そうとしてる。もしくは——試した後だとか。それなら、今ここで何も起きなくても不思議ではないんだわ」

「そうか——」

 男は、それだ。とばかりの表情。

「さて、どうして欲しい? 一応。聞くだけなら聞くんだわ」

 魔女は問う。

 願いを——。

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