【5】
第二試合。
広場でハロウィンポーズ。
昼時の広場は賑わっていた。既に仮装をした人も多く、紛れ込む事はできたものの、やはり目立つ。多くの怪物は、シックなモノトーン。それでも、喫茶店よりはマシだった。あちこちで、仮装で写真を撮る人が多かったからだ。どさくさに紛れることができ、この勝負も引き分けに終わる。
ミハイルは内心焦っていた。
まさか、これほど喰らいつくとは。
喫茶店で一勝を得る算段だったが、なかなかに手強いな。全身エナメルは、かなり目立つ。この好奇な視線は耐え難いはずだが。
化粧を施した顔からは、表情が読み取りづらい。
次で勝たねば。
決意を固め、最後の勝負に挑む。
第三試合。
十人の子供達からトリックオアトリートと言ってもらう。
この勝負は夕方まで続いた。
二人のモンスターの姿は、小さな子供には刺激が強すぎた。
道ゆく子供達にアピールをするも、ことごとく恐れられる始末。
誰の一人からも声をかけられない哀れなモンスターが二人。
広場のベンチに腰をかけ、一人は空を。もう一人は地面に視線を向けている。
もうすぐ、ハロウィンの夜が来る。
徐々に人が増えてきたものの、脱力する二人のモンスターはそこから動けない。
もう無理かも……。
諦めかけていたその時。
地面に視線を投げていたルシアンに、小さな靴が入り込む。
「トリックオアトリート」
聞き覚えのある声は、はっきりと、そう告げた。
勢いよく顔を上げると、あの時の少年が立つていた。
小さな吸血鬼姿の少年は、太陽の花を一緒に取りに行った時の子だった。
「お兄さん?」
化粧したままのルシアンに、少年は不安そうに首を傾げる。
「——あ、お菓子。はい」
「ありがとう。やっぱり、お兄さんだった。お顔が白かったから違う人かと思っちゃった。」
「どうして、ここに?」
「今日はハロウィンだから。お母さんに連れてきてもらったんだ。妹も一緒だよ」
「そっか。妹さん、元気になってよかったね」
「うん!」
満面の笑みに、元気を取り戻す。
「——完敗だな」
一部始終を隣で見ていたミハイルは呟く。
「家族と来ているのかい?」
初対面の少年へ声をかける。
「はい!」
「それなら、このお菓子も持って行くといい。良いハロウィンを」
ミハイルは自分の分のお菓子を全て差し出した。
両手にたくさんのお菓子を抱え、ジョンは家族の元へ去っていく。
「君の勝ちだ——ルシアン君。男に二言はない。君を認めよう」
ルナの選んだ衣装でハロウィン勝負三本戦。その勝敗が決まった時。時刻は十九時を回っていた。
「あー居た」
ローブ姿のルナとローズは、哀れなモンスターを見つ声をかける。
「ちょっと、二人にも手伝って欲しいんだわ」
「手伝う?」
「そ。演出は、派手な方が盛り上がるんだわ。それに、ジョンに会っただろう? 折角だから、魔法使いらしい所、見てもらいなよ。パパもね」
モンスターからの解放。
二人はルナの指示通りに、魔法使いの姿へと戻る。
ハロウィンの夜。
空を旋回する魔女と魔法使いの姿に、人々は歓喜した。
高く、低く、素早く。
鳥のように、自由自在に飛び回る。
片手を振ったり、逆さになったり。
圧巻のパフォーマンス。
箒の上に立ち、静かにゆっくり地に降り立つと、拍手が巻き起こる。
毎年恒例とはいえ、やっぱり盛り上がる。演出を終えた後は、宴に加わる。
広場には沢山のモンスター達。
吸血鬼に魔女。狼男にミイラ男。
辺りは、飾られたかぼちゃや、ランタン。うっすらとスモークがかかり、ひんやりとした空気を流す。
不気味な音楽がどこからともなく流れ、宴はこの上なく盛り上がった。
本物が混ざってても、気が付かないくらいには——。




