【4】
男同士の三番勝負。
その一。喫茶店で一時間過ごす。
その二。広場でハロウィンポーズ。
その三。十人の子供達から、トリックオアトリートと言ってもらう。
一見すると簡単にも思える内容も、ルナ特製のハロウィン衣装に着替えた彼等には、拷問に近い。
まずは、ルシアン。
コンセプトは、吸血鬼。
全身赤のエナメルスーツに、裾がボロボロに引き裂かれた黒い光沢のあるマント。顔は真っ白に塗られ、目周りには黒い蝙蝠をペイントされる。ポイントは、ベルトがわりの十字架がたくさんついたチェーン。
続いて、ミハイル。
ルナは父親といえど容赦はしない。
コンセプトは、狼男。
全身グリーンの毛。袖の破られた紫色のビロードのベスト。下半身には、オレンジ色のかぼちゃパンツ。狼の鼻と耳のついたグリーンの帽子を装着。全顔緑に塗ったあと、眉太く濃く。そしてチャームポイントとして髭を描かれる。
全身にデバフを食らった彼等を、ローズは咽せる程に笑っている。
「昨日いきなり、ハロウィン用の衣装を作れって無茶振りしたんだから。文句は一切受け付けないんだわ」
全身を映す鏡には、とんでもない姿の自分が映される。
「流石ルナ。ハロウィンらしい衣装だ。ありがとう。お礼は後でも良いかな?」
「いつでもー」
なんて余裕。やっぱこの人すげー……。
「それじゃ、ルシアン君。お菓子を配りに行こうか」
「あ、はい……」
提案した側のミハイルは、大人の余裕を演じた。
珍妙な服装の二人を見送った後、涙目をこすりながらローズは言い放つ。
「あれじゃ、子供逃げちゃうわよ。ある意味本物のモンスター」
「ハロウィンだから、大丈夫でしょ。あれくらいの仮装なら、皆やってるんだわ」
「——そうゆうことにしとくわ」
いつもの事ながら、ぶっ飛んだセンスを披露するルナの言葉を軽く受け流す。
町に到着するまでの間。男性陣に会話は存在しなかった。
こうなることは、想像に難くなかったのに。いざとなると、多少の後悔が胸に残る。
「ルシアン君。勝負の内容は覚えているね?」
「はい……」
「そろそろ始めよう」
奇抜なモンスターは、道ゆく人の視線を集中的に集めた。その中で、試合は開始する。
第一試合。
喫茶店で一時間。その前に退店すれば、敗者となる。
一軒の喫茶店。そのカフェテラス。それぞれ背を向ける形で席に座る。
時間の過ごし方は自由。
飲み物を注文するも、こう視線が集まると、喉を通さない。カップの持ち方、唇の付け方、飲み方。姿勢や視線。その仕草の全てに神経を使う。
体感三十分が実際は十分しか経っていない事実。
こんなにも、時間が遅く感じるなんて。
白く塗られた顔は、うまく赤面を隠した。
耐えに耐えて、勝負は引き分けに終わる。
やっとの思いで喫茶店を後にした頃には、全身から変な汗が出ていた。
「やるじゃないか。では、次は広場へ行こう」
ルシアンには、余裕があるように映った。




