【2】
部屋に入ると、神妙な面持ちで手を組んだ手をテーブルに立て、その上に顎を乗せている、ミハエルの姿が飛び込んで来る。
ピリッとした空気感が漂い、居心地が悪い。
「——それで、君は?」
この空気を作り出している原因が自分にあるとルシアンは察知する。
「——ルシアン・ロゼです……」
視線が痛い。
金色の瞳から品定めを受ける。
「こっちが使い魔のモモコ。あのサーカスの一件から、一緒に住み込みで働いてもらってるんだわ」
「住み込みで、一緒に働いている……。パパ初耳」
「言ってないもん」
「……そうか」
視線が強まる。
「報告では、確か。三尾の狐だったね」
「そ。それに同級生のよしみ」
「へぇ……同級生なんだ」
じっとりとした痛烈な視線。
「それで、用事は?」
「さっき言った。トリックオアトリートって」
「だから、それは明日。え——まさか、本当にそれだけ?」
「何か問題でも?」
「一応さ。一応だよ、魔法庁のトップじゃん? それがさ……いいや、もう。なんか、馬鹿らしくなってきたんだわ……」
脱力し、テーブルに突っ伏す。
「それだけじゃないさ。流石にパパも手土産くらい持参する。さっきクロに渡したから、後で食べるといい。色々、協力してもらってるからね。以前、貰った情報で子悪党を捕まえられた。ただ、残念ながら子悪党達から引き出した情報は偽物で、大元まで辿り着けていない。今回は大丈夫だったみたいだけど、十分に気をつけて欲しい。魔女や魔法使いは、ルナ達みたいにクリーンにやっている人だけではないという事を」
「……わかってるんだわ。それで、モモコちゃん捨てたやつの方は?」
「勿論。捕まえたさ」
「そっ」
親子の会話は素っ気ない。
「——ところで。パパ、少し彼とお話ししたいんだけど、良いかな?」
「あー。良いけど。あんまいじめないでよ?」
「はは。大丈夫。本当、少し話すだけだから。ね?」
ルシアンはミハエルの笑顔を受け、固まる。




