【1】
魔女にとって、一年で一番の大イベント。それがハロウィン。
クリスマス? ノンノン。
魔女が最大限輝けるのは、やっぱりハロウィンなんだわ。という事で、この時期は超のつく大忙し。依頼のお仕事もお休みせざるをえない。
麓の町で装飾や仮装衣装作製のお手伝い。城では、訪れる子供達にお菓子を配り、ハロウィンパーティでは、箒に乗って空から舞い降りる大事な演出を任される。
これが、また盛り上がるんだわ。
飲んで食べて踊って。
広間は仮装した人で大盛況。
ってな事で、明日の本番に向けて、今日もドタバタなんだわ。
ルナ達は、城の入り口の装飾に勤しんでいると、突然チャイムが鳴り響く。
「あー今手が離せないんだわ。ルシアーン。ちょっと出てー」
「はーい」
一番近いルシアンは、カゴを床に置き、扉を開ける。
「トリックアトリーーーーーート‼︎」
耳を劈く大声が響き渡る。
「あれ? 君、だれ?」
見下ろされているルシアンは、目の前の人物が誰か分かり、口をぱくぱくする。
「お菓子がないなら——悪戯しちゃうぞ」
にっこりと微笑んでいるが、目は笑っていない。
や、やられる——
「それは明日。よって無効の為、罰を与えまーす。ルシアン、屈んで避けろー」
「え——」
振り返ると、巨大な火の玉が向かってくる。咄嗟に屈んで避けたものの、当たってないかそっと視線を上げる。
「ははっ。火力高いなールナちゃん。元気そうだね」
無事だった。
「このくそ忙しい時期に来るなんて、常識置いてきたのかー」
「それは、つまり非常識って事かな?」
「そうだよ。ハロウィンだよ、ハロウィン。非常識以外の何者でもないんだわ」
「娘にそんなに言われるなんて、パパ泣いちゃう」
「おー泣け泣け。泣いたら、さっさと帰れ」
目も合わせず、ルナは手を動かし続ける。
ルシアンは気まずさのあまり、しゃがんだまま動けない。
えっと……やっぱり、この人魔法庁の——どうしよう。俺、どうすれば?
「ミハイル様。どうぞ中へ——お茶とお菓子をご用意致します」
「……ああ、頼むよクロ」
少しだけ肩を落としたその男を、クロはいつものように案内をする。
二人の姿が見えなくなると、ルナは大きなため息を零す。
「はぁったく。来るなら事前に連絡入れてほしいんだわ。ルシアンくーん。うずくまってないで、早く装飾やっちゃお」
「あ、はい」
ぶつぶつと文句を言い続けるルナと、血の気が引いているルシアンは、急いで飾り付けを終わらせる。




