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魔女の戯れ  作者: 42
太陽の花
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【5】

 月光に照らされた乱入者は、五人。空から地上に降り立つと、魔法の杖を構えた。

 見知らぬ顔ぶれ。

「その花を置いて去りな」

「——もしもしポリスメン?」

「ノータイムで通報するな! ってか、ここは魔法庁の管轄外だっての!」

 リーダーらしき女は吠える。

「そう。ここでは何が起きても自己責任」

 背後の方角から使い魔らしき獣の気配。吠え方からして狼の類か。

「逃げるなら、見逃してあげる」

 挟み撃ちとは、手慣れたやり方。

「ふむふむ。小汚い手口。悪いけど引く気はないんだわ。とう事とで、ルシアン君。漢を見せたまえ」

「——えっ? 俺?」

「仕事なんだからやりたまえ。ジョンが根性を見せたんだから、君も根性だしな!」

 そう言って、ルナはルシアンの背中を勢いよく叩く。

 反動で、一人前へと飛び出る。

「はは……えっと」

 何をしていいかと思った矢先。モモコがルシアンの前に立つ。

「帰れブス」

 は?

 全員の時が止まった。

 ルシアンは驚きの表情を浮かべる。

「——ちょっ、と——今なんて?」

 リーダーらしき女は、口を開く。

「帰れブス。と申し上げました」

 モモコはニコニコとした微笑みを浮かべている。

「ちょっ、え? 私に言った?」

「ええ。他に誰がいるのです? あぁ失礼致しました。ブスとブサイクの集団でしたわね。あまりの醜さについ口が滑ってしまいました。横取りだなんて。えぇ、えぇ。本当に醜いですわ」

 終始笑顔で吐き出される毒に、後方に居る魔女二人は腹を抱えて大爆笑していた。

「ちょ、お腹痛い! 何なのあれ、最高すぎるんだわ」

 侮辱された女は杖を強く握りしめる。

「——決めた。全員、血祭りよ」

「ははっ——しゃあない。やるよローズ。面白いもの見れたし、今日のあたしは超ご機嫌なんだわ!」

「そうね。フランネル、使い魔達の方は任せたわよ。一人で大丈夫?」

「ええ。問題ありません」

「そ。じゃお願いね」

「かしこまりました」

 獣の姿に変化したフランネルは、その大きな体で俊敏に駆ける。

「クロたんは、ジョンと太陽の花を死守ね。任せた」

「はい。お任せください。ルナ様」

 二人の魔女は、杖を片手にルシアンの隣に立つ。

「ルシアン君。いいね、君の使い魔。気に入ったんだわ」

「えっ」

 肩を組みそっと小声で囁かれ、胸が跳ねる。「ほらほら、早く命令しなよ。ご主人様」

「——っちか——じゃなくて、命令って何を言えばいいかわかんないって」

「馬鹿たれ。こんないい使い魔使いこなせないなんて、勿体なさすぎるんだわ。元の姿で援護してくれ。くらいで十分なんだわ」

「わ、わかつた」

 腕を離され、ルシアンは言われた通りに命令を下す。

「モ、モモコ——さん」

「はい」

 微笑みを浮かべたまま振り向く。

「えっと——元の姿で、その援護とかお願いでき、ますでしょうか?」

 命令。ってのが、どうも苦手。される側だった癖が抜けない。

 下手にお伺いを立てる。

「えぇ、勿論。仰せのままに」

 声を弾ませて承諾。

 モモコは、桃色の毛並みを靡かせ、華麗に狐の姿へ変化する。

 その美しくも大きな狐は、三本の尾を揺らし、研ぎ澄まされた爪を見せびらかし、乱入者へ唸り声を上げた。

 それはもう、腰を抜かすレベルの恐怖。

 威嚇されただけで、乱入者は後ずさる。

「——使い魔も連れていない弱者の集団にでも見えたのかい?」

「使い魔……はっ」

「あっちはもう遅いですわよ。ほら」

 大きな純白の狼が姿を現し、花の横に座り、遠吠えをする。

「たった一匹で——」

「ごめんなさいね」

 申し訳なさの全く感じられない謝罪をローズは返す。

「ほら、ルシアン。君も頑張りたまえ」

「でも、俺、こうゆうの初めてだし」

「魔法使いになりたかったんだろ? 上司への不満とか日頃の鬱憤とか。そういうの晴らす感じでやればいいのさ。とにかく。今ここでやらなきゃ、いつまで経っても何も出来ない新人のままなんだわ」

 ルナに尻を叩かれ、ルシアンは杖を握り一歩踏み出す。

 不満……悩み……。なりたかつた自分。

 そうだ。

 俺は——

 浮かんでくる。

 それは、魔法のように。

 暖かに 鮮やかに 流れる

「ガルフストリーム」

 青い滝が一気に頭上から溢れ出て、水圧で地面へと伏す。

「おー。やるじゃん」

 伏して動けないままの彼らの上に、滝は容赦なく降り注ぐ。

「ちょっ、止まんなーい」

 ルシアンは慌てふためく。

「どーしよー。どうしたらいいのー」

 あれが不満からくるものなら、相当に溜め込んでたんだなと哀れみを向けるも、とめど無く流れる水をどうしようか考える。

 こればかりは、本人の加減次第。

 ローズと視線を合わせる。

 すると、モモコがルシアンの元に歩み寄り、頭を擦り付ける。

「落ち着いて。深呼吸をしてみてください。あなたなら、ちゃんと出来ますから」

 半身の言葉を受け取り、ルシアンは深く、深く息を吸い、ゆっくりと吐く。

 すっと力が抜け、魔法は消えた。

「よ、よかった……」

 すっかり意識をなくした乱入者達は、ルナとローズの手により、杖を没収され縄で縛られる事となる。

 

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