【2】
息子さんを預かります。
なんて言ったものだから、母親はパニックに陥った。必死に落ち着かせてから事情を説明したのち、三日の猶予をもらい、魔女と七歳のジョンは、旅立つ。
太陽の花は、鋼山の山頂付近にのみ、ごく僅かに生息している。
山頂に近づくにつれ、道は険しく岩肌が多い。魔法薬の材料はそう多くないが、太陽の花が生息している為、管理は魔法庁に委ねられている。自然のまま。人の手が加えられていない鋼山には、野生の動物や妖精、野獣までも生息しているため、極めて危険。その為、一般の人は足を踏み入れない。ここに来るのは、魔法が使える魔女や魔法使いが殆ど。ましてや、七歳の少年が訪れていい場所ではない。
麓の村まで箒で移動したご一行は、空腹を満たしたのち、入山許可証を取りに入山入口まで徒歩で移動すると、事務局で入山者名簿に名前を記入。同意書を手渡される。
一 山の中で起きた事は全て自己責任。魔法庁は一切のご意見を受け付けません。
二 捜索は、同意書に記載の日数を過ぎ、かつ希望した者のみとする。ただし、捜索中の事故や事件に関しての責務は入山者及びそのご家族にあるものとする。
三 同意書に記載の日数より三日経過しても下山がない場合、行方不明者登録させていただきます。尚、行方不明者登録解除には、一億ゴールド頂戴致します。
思っていたよりも過酷そうな内容にルシアンは不安を覚える。事務仕事ばかりで、本格的に魔法を使うのなんて学校卒業以来。
それに、今回は子供も一緒。
この同意書から察するに、山の中で死んでも自己責任で片付けられる。過剰入山に対しての対策もあるし。
やばいのでは?
「怖気付いちゃった? 万年事務職のルシアン君には早かったんだわ?」
いじめっ子のように揶揄う。
「べべつに怖くなんか……ないし。ジョンも一緒だから、大丈夫かなって思っただけだし……」
「あなたが不安だと、ジョン君も不安になるわよ。ここは意地でも堂々としていなさい」
ローズが耳打ちする。
「さぁて、入山許可証も出た事だし、いざ出発なんだわ」




