【2】
買い物袋を両手に抱え、ローズとルシアン。そしてモモコは魔女の城を訪れた。
「それ、そこに置いといて」
言われた通りに、広間のテーブルに荷物を置く。
「丁度昼食の時間ね。荷物を運んでくれたお礼にご馳走するわ。座って待ってて」
促されるまま、ルシアンとモモコは隣り合って座る。
ソワソワと辺りを見回しながら待つ。
三十分程経つと、ローズとルナが食事を運んで来た。
相変わらず、私服が派手なルナの姿に、ルシアンの胸がどきりと跳ねる。
湯気がたつ、作りたてのミートソースパスタと、レタスとキュウリのサラダ。コンソメスープが目の前に差し出された。
「さ、頂きましょう」
冷めないうちに。
鼓動を抑えようと、食事に集中する。
程よいトマトの酸味と、大ぶりな挽肉。そして粉チーズの香りが絡み合い、大変美味。一人暮らしだと、料理はほとんどしない。昼ごはんも、インスタントや惣菜で済ませる事が多く、こうした家庭の味は本当に身に染みる。
残さず全て平らげた後に、食後の飲み物としてクロがアイスティーを運んできた。
食器を下げ、テーブルを拭き、飲み物を置く。
手慣れた動作に習慣性を感じる。
「意外なんだわ。まさかこんな美人だったなんて。モモコだっけ? 昨日ぶり」
「はい。昨日は、本当にありがとうございました。なんとお礼を申し上げて良いか——」
「気にしなくていいよ。団長から報酬弾んでもらったし。間一髪だったんだわ。——ふーん。あんま冴えないやつって思ってたけど、違ったんだな。使い魔を見れば、その主の力量を測れる。まぁ、伸び代はあるって事か。使い魔には、出会えない人は一生出会えないし。出会える人は、赤子の頃から一緒。不思議なもんなんだわ。で——辞めたいんだって? 仕事」
ローズから聞いた。
そう付け加え、ルシアンを見る。
「え…………あ、そう……です」
「ふーーーーーーん」
ルナは萎縮し、目を泳がせるルシアンをじっと見る。
「ま、いいんだけどさ。丁度、もう少し仕事増やしたいところだったし」
ルナが何を意図して話しているのか見当もつかず、ルシアンはどうしていいかわからないでいた。
「あんた。うちで働けば。ニートになるよりはマシでしょ。ま、嫌ならいいけど。無理にとは言わないんだわ」
「お——お願いしまぁぁぁす!」
ルシアンの即決。
真っ赤な顔をテーブルに伏して、願ったり叶ったりの提案を受け入れた。
「——お、おう。それじゃ、荷物まとめてきなよ。部屋はいっぱいあるし。どの部屋でも——」
「ちょっ! ちょっと待った——え? ここに住む感じ?」
「そうだよ。ローズだって住んでるし」
「あ——いや、そうゆう事じゃないっていうか、その俺——」
もじもじとしているルシアンに、ローズはニンマリとしている。
思いを寄せている人と、いきなり一緒に住もうなんて言われたら、そうなるわよね。でも残念ながら、ルナはこれっぽっちもあなたを異性と思っていない。なんて面白い展開なのかしら。確かに、辞めるんなら雇いましょうよ。なんて言ったけれど、まさか住み込みになるなんて。あーでもこれはチャンス。異性として自覚させるチャンス! わたくし、あなたの恋を応援しているのよ。だって、あまりにも健気すぎて、もう泣けちゃう。普通なら、就職して疎遠になったらもう諦めるじゃない。職場にも可愛い女の子は居たはず。それなのに、わざわざルナを探して会いに来るんですもの。それに、このやべー私服を見ても素直に受け入れ、この性格を知っていながら一途なところ。懐が広いわ。ルナを受け入れられるのなんて、あなたくらい(わたくし調べ)ということで。全力でルナに同意致します。
「そうよ。わたくしだってお世話になっているんですから。それに、いつお客様がいらっしゃるかわからないのですから。ここに居た方がすぐに対応できるわ」
「ま、そうゆう事。じゃ、準備が出来たら連絡して。はい、これ」
ルナは自分の連絡先をルシアンに手渡す。
「き、き、キャパオーバー」
震える手でそれを受け取った彼は、かつて無い出来事にその場で意識を失い倒れた。
おい、大丈夫か? こいつ。
などと言われた事は耳に入らず。
それから正式にルナ達と働くまでには、一ヶ月を要した。




