壊滅の危機
「みんな!よく勝ってくれた!我々人類の勝利だ!」
部下たちの前で鉄壁は今回の作戦参加者達に賞賛を送っていた。
「と言っても5人とも入院だからね、5人で第4騎士団1つでは効率がよろしくないよ、鉄壁支部長。ピュアヘブンは負担が大きい、もっと気楽に打てる技が必要だ。あれでギリギリかぁ……。キホテ団長にあんな隠し玉があったなんてね」
「数なら敵の幹部を倒せるならいけるのではないか?」
「幹部とは言うけどさぁ……便宜上は幹部なだけだよ?一応騎士団長ではあるけど本当の幹部はバルサク宇宙帝国陸軍司令長官、皇帝親衛隊長ナポレーン元帥、バルサク宇宙帝国騎士団総長、皇帝親衛騎士団アッサー騎士団長、バルサク宇宙帝国艦隊司令長官、皇帝側用人シタッパー提督。この三人に皇帝陛下だけだ、後は政務担当の元老院議長のシーザくらいだな。昔は皇帝護衛官だったが戦場にでてくることはないだろう。もう一人幹部面をしているバルサク宇宙帝国科学長官のシュタインとかいうやつがいるがこのメンツでは一枚、いいや三枚は劣るので気にしなくていい。最低の科学者だからね」
「肩書が多いな。……いいのか?たかだか支部長にそのような情報を」
「アメリカは研究に向いてなかったからなー、僕の亡命後に掌を返して交渉を断ち切りにかかったのを見て別国に行くことにしただけだよ。アメリカ救援部隊は出さない。私は母国を滅ぼすために亡命したわけでもないし開戦責任は地球側にあると思っているからね。バカなことをしたものだと思うよ、交渉下手なのかい?」
「…………ノーコメント」
「まぁそうだろうね、アメリカで見た戦隊ヒーローを見ていけると思ったのだが……この始末だからね。元ネタが日本と聞いてこちらに住居を移して研究をするとごねまくってたら地球側の軍艦が軒並み皇帝陛下に破壊されまんまと日本に移動できたのだが……いやぁニチアサのヒーローは奥深いね!」
これさえなけりゃあなぁと思う鉄壁支部長だが、この発想が5人の変身形態のきっかけになったのも事実。
そのうえ名乗り口上中も攻撃されないので奇襲作戦や普通に攻撃するように強制した地球防衛軍側のメンツは丸つぶれである。
この後明らかになるが結果的に地球防衛軍沖縄部隊と九州部隊は鎧袖一触の有り様である。北海道部隊は分散していたため各個撃破、四国に至っては油断しており数時間で地方の主要都市を陥落させられた。真面目に名乗り口上を一人づつやって時間稼いだほうがよかったのではないかと総括で上がるほど真剣に検討されるほどに完膚なきまでに負けた。
「ああ、そうだ鉄壁支部長。米軍の援軍は行けない旨は伝えたのかい?」
「いや、5人が退院後に派遣してほしいと言うところで止めている。敵……失礼、バルサク宇宙帝国も民間船や輸送船は攻撃しないのでそれに乗せて移動できないかと」
「流石に必死で沈めに来るだろうねぇ、5人の力は彼らからも理解る、そんな物が小さな船に集まっていたら捕捉されるだろう?5人の所在地を察知されないよう日本全土にジャミングとカバーを掛けているのは私の発明だよ?ハワイは陥落してるのにどうカバーをかけるんだい?そんな大規模に覆ったらそれこそこの辺で動きがあるっていうようなものじゃないか。アラスカ方面も既に分断されてるしカムチャッカも一部は占領されてるはずだ。確証はないがおそらく北海道攻撃の際に抑えにかかっただろうさ。話を戻すけどハワイにカバーを掛けたら向こうは察知して死ぬ気で艦船を漁るよ?すぐに分かるだろうねあの力じゃ。輸送船として武器を運んでる船は撃沈されてるんだ、だから落ちたら面倒な飛行機で輸送して撃墜されないようにしてるんだろう?現に海上飛行してる場合は落としてるからね。ほしいのは土地であって処理されてないゴミ付きの土地ではないのだよ」
あまりの辛辣な物言いに鉄壁支部長は顔を顰めるが、自分もエデソン博士も巻き込まれた側だと思い顔を戻した。
実際はアラスカ方面はともかくロシアとの多方面作戦を避けるためこの会話の時点ではバルサクはカムチャッカは放置している。
「それに、アメリカは今月中に落ちるさ。来月の地球防衛軍の会議……いや今月に緊急会議かな?それに君は欠席したほうがいいね」
「それはどうして?うちは当事国ですよ?」
「死にかけの国に自国の人間を掠め取られて滅びたいのかい?彼らは脅して分捕りこき使って終わりだよ。別にアメリカ以外でもそうするだろうけどねー。そもそも責任者を呼び出すってどうなのさ、最前線だよ?たしかに実際支部長が戦闘指揮を取るわけではないけども。その手の通話はバルサク側は盗聴可能とは確かに言ったけど。実務担当者でいいと思うけどね」
「しかし、代理を出しても押し切られそうですし……」
「だから土壇場でキャンセルしなよ、死にたくないでしょ?家族もいるんだし」
「その後は?」
「それどころじゃなくなるさ!僕はあの国にいたんだよ?アメリカは勝てないさ、それに恨みを買いすぎた。うまく立ち回った国を見るといい、カナダやスペインが真面目に帝国と戦争してるかい?」
「…………」
何度も議題に上がったスペイン方面からの攻勢。スペイン側は拒否しており自国への核攻撃をしたフランスに対して非難をしているが、フランスは敵を倒すためで問題はないとの開き直り国境に兵を集め互いに牽制し合っている。
イタリア側も拒否しており誰が音頭を取るかでも何処の国の兵を使うかで揉め続けている。地球防衛軍を国別に組織したせいでこのような弊害が生まれてしまったので再編しようとしたが言語の壁があると揉め続けている。そもそも他国が自国の兵を握れば使い潰すに決まっているとロビー活動で反対意見に持っていこうと必死である。
この内情をバルサク側が知れば地球側と終戦にする手段として不仲な国をさらに不仲にするためハラスメント攻撃を強行していただろう。
人食いパエリアン将軍の戦死で後任への引き継ぎまでの戦線停滞、そしてスペインが実質寝返っていたため攻勢を中断したこと。
この重なりが皮肉なことにスペインこそが欧州を守る壁として機能していたのである。
そしてカナダ、南アメリカ戦線に支援名目でアメリカ側から過剰な物資を要求され、ついでカナダ軍を投入することになった。
地球防衛軍になった後は地球防衛軍のアメリカ人司令官がアメリカ兵より先に他国の兵を投入し後方重要拠点防衛をアメリカ兵に守らせる行動をしたため実質南北アメリカ連合軍だった地球防衛軍は内部から崩壊。ボイコットと降伏が相次いだ結果、アマゾナスの決戦で同士討ちが始まりそこを強襲したバルサク帝国軍が地球防衛軍という名の烏合の衆を撃破した。
今現在アメリカ側へのゲリラ攻撃をしているのは旧地球防衛軍の人間や旧国家の反米主義者たちである。
バルサク側も勝手に味方が増え、勝手に攻撃している現状困惑はしているのだが人類側に知るすべはなく、卑劣であると抗議するのが精一杯である。
バルサクからしたら自分たちの昔を思い出し悶絶したくなるようなザマなのだが。
そんな状況を見ていたカナダはグリーンランド陥落直後に交渉していたが決戦前の敗北の空気を察知して即座に裏取引に入った。そしてグリーンランド方面に全戦力を張り付かせアメリカ側に当初とは逆の立場で支援しろ物資をよこせといい無駄な交渉を続けて時間を稼いでいる。
「な?こうも堂々と戦争ごっこをやっているのに手を出せない。まぁ地球防衛軍側が寝返りを理由に攻撃してきたらそのまま寝返ればいいだけだしね、スペインに転移装置をおかれていたら攻めたのがスペインではなくバルサク宇宙帝国で攻勢の始まりだよ?隣国に核まで打ち込んで国土を守りたいフランスが許容できまいさ。トルコあたりに上陸して来たら平気で核を打つだろうけどね。アメリカとて、ここでカナダを攻撃して戦線を増やすことはしないだろう。勝ってるなら慢心もあるが負けてるのに許容できまいという話さ。つまり終わりだよ」
「そんな!では我々は!人類はどうやって勝利するのですか!」
「え?ないよそんなの」
慟哭するような鉄壁の声にエデソンは呆れたような声で返す。
「忘れてないかい?これは絶滅戦争ではないんだよ?講和すればいいじゃあないか。おそらく皇帝陛下たちもアメリカ欧州を制圧したら再度勧告を出すだろう。国連は交渉に値しないというのは私も同意見だ、ロシアや他アジア圏は知らん。君等だって国連なんてどうでもいいだろう?他国の権益しか守らない組織を維持したいのは守られてる他国だけさ」
「では5人が戦う意味は!?」
「少なくとも日本は守れるよ、戦闘能力があるんだからね。よかったじゃないか!ほらこのニチアサ系を見てご覧?ほとんど日本を攻撃しているだろう?彼らはなぜ日本にこだわるんだい?」
「そんなの子供だましの!話の都合だ!」
「変身装置を見てまだ言うのかい?他の国の描写があることは少ないのはなぜだい?彼らは大半は地球征服に来てるのだよ?日本征服ではない。私は日本以外征服されてると思っているよ、君は軍人だろう?どうして補給を断てる要塞に万全な補給を与えつつ正面攻撃しかしないんだい?普通はこんな島国ありったけの輸送船を攻撃して補給を断てばいいじゃないか、あとはヒーローがいる時に攻撃せず放置すればいい、日本は秘密交渉で降伏したとか嘘を他国に伝えるのもいいね、勝手に治安が悪化してハイおしまいだ。そもそも世界征服の第一歩に適した国なんてもっとあるだろう?オーストラリアとかアフリカ諸国とか秘密基地大規模に作ってもバレないだろう?」
「…………」
「それに技術力が人類より優れた侵略者だよ?核なんて効かないようなやつだっている、ありったけ日本中に落とせばいいじゃないか、なぜしないんだい?」
「話の都合だ」
「違うよ、現実だよ。我々は植民する星が欲しかったし移民を受け入れてほしかった、なんなら月面だって地球側に権利がないことを知ったうえで技術提供した後住ませてほしかったし地球と帝国を共同体にでも連合国家にでも何でもしてよかった。それだけ住める場所が欲しかった。だから汚染された土地にはしたくないんだ。もう一度聞くけど軍事的な見地で世界と戦争する相手が一国に拘る理由はなんだい?」
「……その場所が必須だった」
「そうだね、日本から生まれた組織だとそれもあるね。もう一声」
「最後の一国だった」
「正解!それなら必死こいて全力を注いで落とす必要があるよね、世界征服したいんだから。じゃあ戦力を逐次投入するわけないよね?だって最初っから全力で襲いかかって巨大化してしまえばいいじゃないか!ニチアサだとどのヒーローも怪人40~50体くらいいるでしょ?最初っからやればいいじゃないの、10体は負けたならもう幹部も含めてやるべき、でやらない理由は?たとえば復活や生み出す方式だと毎週に思えるけど実際はもっと間が空いてる可能性があるよね?でも最初っから軍が揃っていて1体1体出す場合はどんな事が考えられる?」
「派閥……」
ただの話の都合だし、それで勝ってしまったら話が終わるからと言いたいが別に1話でヒーローが勝つ話があっても良くないかと返されるのも確かだった。
だが軍事的に考えるとここで勝利したところで……後回しにしてしまえばいいだけだ。女子高生を戦場に送り込み小規模な戦闘で勝っただけで喜ぶ自分の、地球防衛軍の浅ましさを非難しているようにも思えた。
「そうだね、いま君たち地球防衛軍がやってるやつだね。バルサク宇宙帝国はそんなくだらん争いはしないよ、シタッパー提督は艦隊戦の名手だ、それが船員を率いて陸戦、切り込み隊を地球方式に合わせて海兵隊にして援軍として送り込み帝国軍も騎士団も援軍を送り合っている。船が使えんからと舐められてたりはしないし失脚もしない。建国時の古参を舐める愚か者なんて新参でもしないだろう。逆に艦隊戦主体のときでも提督は2人を軽んじたことはない。スペインで君たちは帝国軍から派遣された人食いパエリアン将軍を戦死させたが事実上トップだったシタッパー提督は罰せられたり指揮権を取り上げられたり帝国軍側とギクシャクしたかい?定期的な帝国側が見せてくる世界中継で2人が険悪だったことがあるかね?」
「それくらい……取り繕えるだろう……!」
「君等ですら出来ないのに?そもそも私は元々あちら側だよ?よほどの失態でもない限りは問題にはならないし帝国側の人間が死ぬのが初めてだとでも思っているのかい?僕はかつて親戚が戦死してるよ。その程度の理由で揉めることはありえないね。話を戻すけどニチアサのヒーローはその状態でどうやって勝ってるんだっけかな?」
「幹部を全員倒して、最後に親玉を倒す」
「植民したい相手だからできるかもねぇ、普通は赤字になったら諦めて帰るか辞めるけど出来ないからねぇ……で、不仲でもなく協力体制にあり現に日本攻撃をそれぞれ分けながらそれぞれが支援しあうこの状況で戦力を逐次投入してくれると思うかい?」
「結局何が言いたいんだ!人類側を……笑っているのか!」
にっこりと笑ったエデソン博士はいや学者の悪いところだ、説明が回りくどくてねぇと頭をかきながらトドメの一言を話す。
「もう一度言うよ、人類側が団結できなかった時点で負けなんだよ。だからもう負けているんだ。集団は分断して統治するのが鉄則だろう?あとはここで同化政策をして教化すればいいのさ。帝国はそれでやってきた、いいところは取り入れダメなところは捨てる。多種多様な宇宙民族を抱え込み領土なき国家と揶揄されながらも戦い続けた。最初っから分裂してる連中なんて、しかも分裂してる中でもさらに分裂してる相手なんて……新兵の訓練用戦争みたいなものだよ」
「…………」
「でも足掻けないわけじゃないよ?帝国の目的は植民移民だからね、正直アフリカ、南アメリカ、オーストラリアだけでなんとかなるんだよね……予備の土地もそこそこ抑えてるだろうしさ。とにかく国連の代わりの組織ができてまともに交渉すればいいんだよ、皇帝陛下は目的として言っているが実際世界征服は主目的ではないからね。だから頑張ればニチアサヒーローの敵と違って講和の道があるよ」
「……どう頑張るんです?国連の代わりの組織なんて」
「まぁとにかく会議すっぽかしてアメリカが滅んだらまた話すよ、そんな感じじゃ説明しても納得しないでしょ?じゃ、仮面なんとかシリーズ見るから帰るね」
と部屋に戻るエデソン博士を見送る鉄壁泰造日本支部長は5分前の高揚とは全く逆になっていた。
もう終わってるけど頑張ってくれと言われて頑張れるのはそうはいない。
兵隊は監督に努力を見せつけるため敗退決定後も頑張る選手ではないのだ。
そして数分後、帝国から沖縄・九州・四国・北海道の主要都市制圧宣言が成され、地球防衛軍の敗北映像を流しながら帝国軍が各地の平定に向かっていることを伝えた。
米側が現地の地球防衛軍の指揮を取り敗北、指揮系統を勝手に米側地球防衛軍に1本化したうえでそのことを日本支部に連絡せず敗北後に無断撤収したことに対し鉄壁はやるせなさを覚えるのだった。




